相対性理論から100年でわかったこと (PHPサイエンス・ワールド新書)

著者 :
  • PHP研究所 (2010年9月18日発売)
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感想 : 19

佐藤勝彦先生の本はたぶん読んだことがなかった。佐藤文隆先生の本は数冊読んでいるのだけれど、勝彦先生の方がなんとなく難しいと思って読んでいなかった。ところが本書を読んでみると、勝彦先生の方が数段わかりやすく(この本は特にそういうつくりになっているのだろうが)おかげで、宇宙論・素粒子論の全体像がなんとなくつかめた。もっとも、読んでしばらくたつと全く記憶から飛んでしまうのだけれど。本書で最もしっくりと理解できたのは、対称性の自発的な破れと相転移の話だった。ノーベル賞を受賞された南部先生の考え方が以下のような具体例をもとに紹介されていた。棒磁石の中の鉄原子はもともとミニ磁石になっている。ふつう、そのミニ磁石は向きがそろっている(「どこから見ても同じ状態」ではない=対称性は破れている)。ところが棒磁石を高温にすると磁石の性質を失う、つまりミニ磁石の向きが熱運動によってバラバラになる(どこから見ても同じような状態=対称性がある)。次に温度を下げていくと、ふたたび磁石の性質をとりもどす(対称性が破れた)状態にうつる。また、特殊相対性理論と一般相対性理論の違いとか、シュレディンガーの猫の話とかも理解が進んだ。基本的な内容で、何度も読んできたはずなのだけれど、やっと、そこそこ人に説明できるくらいになったような気がした。(相対性理論自体を説明することはもちろんできない。)さて、本書では物理の理論的な話だけではなく、それ以外に、ところどころで書かれている、勝彦先生の本音がよりおもしろかった。終わりの方で人間原理の乱用を危惧されているところなど興味深く読んだ。そして最後には、本書を書かれた動機が・・・事業仕分けで研究費が削られるなか、この膨大なお金のかかる宇宙や素粒子の研究に一般の方々の理解をえたいという思いがよくよく伝わってきました。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 佐藤勝彦
感想投稿日 : 2014年12月10日
本棚登録日 : 2014年12月10日

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