ポリコレの正体 「多様性尊重」「言葉狩り」の先にあるものは

著者 :
  • 方丈社 (2021年12月1日発売)
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感想 : 27
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非常に面白かった。内容が恣意的に操作されている疑いがあるが、それでも面白いと思える。

ポリコレ ポリティカルコレクトネス、政治的な正しさ、の略。

東京オリンピックでトランスジェンダーの重量挙げ選手が女子選手として出場し、話題となったことを覚えている人がいると思う。そして同じ重量挙げ選手のトランスジェンダーではない女子選手が「フェアではない」という意見を述べていたことも記憶にあった。

本書で書かれている2020年にSNSであげられたセリーナ・ソウルさんの動画で彼女が女子短距離選手として奨学金を得る機会を失ったことが印象に残った。彼女がその機会を失ったのは二人のトランスジェンダーの選手がタイトルを制覇したことによる。アメリカの金メダリスト アリソン・フェリックス(著書ではフェニックスだけど間違いだと思う)の記録でさえ、彼女の記録を上回る男子高校生は300人近くいるという。

アメリカではマイノリティのみが優遇される社会なのか?マジョリティを犠牲にして?

大坂なおみのマスクで話題になった、アメリカで起きた警察官の行き過ぎた逮捕業務執行による黒人の死。この本を読んだ限りではアメリカの警察官の行為が行き過ぎ、とは思えなかった。しかし本書だけでなくネットの情報を見ると、本書は多分、本書の主張に都合のいい情報を切り取っている。例えそうだとしても、警察官による逮捕行為自体が違法、とは思えなかった。本書で取り上げられている「ジョージ・フロイド事件」のフロイドは犯罪歴多数で、偽札を使用した容疑で警察を呼ばれている。無抵抗だったのか、そうでなかったのか、は本書とネットの記事で全く違っている。警察官のボディーカメラの映像のところから違っているのでなんとも言いようがない。抵抗が本当であったのなら、まあ、拘束されるだろう。無抵抗だったのなら、行き過ぎた逮捕行為だろう。本書によれば、フロイドは薬物を使用していたという。どっちなのだろう。

この事件をきっかけに起こった暴動で25人が死亡したとされる。本当に多くの店舗が略奪、放火に合っている。

BLM活動(black lives matter)の創始者の方の言論も、自分や家族の犯した個人的な犯罪さえ、反省や悔恨がなく、全て人種差別に起因するという自己正当化がある。
持たざるものが行う全ての略奪や犯罪は帳消しになる、富の再分配などと暴徒が主張しているのは恐怖でしかない。この略奪を受けた店主には黒人の個人店主もいて、保険もきかず、一切を失った人もいる。この個人店主たちはmatterである、blackではないのか?
またBLM活動創始者の方が豪邸を建てたこと、中国系の資金を得ていることを本書では指摘している。

1955年 ローザ・パークスの逮捕から始まった、公共バスの不乗車による公民権運動は私も子供向けの絵本で読んだことがある。
差別される黒人を示す例としてあげられる数値として警官に殺される黒人は白人の2.5~3倍というのがあるらしい。しかし、黒人の犠牲者の割合は事実として、黒人の犯罪率から見れば低いという。

また、警察官による黒人の死亡として、ファーガソン事件を本書では取り上げられていた。この亡くなった少年が193センチ132キロと書かれており、彼が向かってきたら警察官が恐怖を覚えても仕方がない、と述べていたが、調べてみたら、警官も190センチ以上だった。これは意図的な感じがする。ただ検視により警察官側の主張正しいだろうということが亡くなった少年の銃創から分かっている。

BLMは白人に殺された黒人だけを問題にするが、黒人による黒人の殺害の方が遙かに問題という話が本書に出てくるが、これはそうだろうなあ。そっちの方が圧倒的に多いから。事件に巻き込まれて殺される黒人の90パーセント以上は黒人によって殺されるそう。しかし、黒人の犯罪率がなぜ、高いのかについての言及も欲しい。

BLMもLGBTもマイノリティが最大限に尊重されて、それに少しでも異を唱えたらたちまち、バッシングが起こるという動きがあるらしい。被害者ビジネスっぽい。
「弱者」を盾にして人を黙らせる風潮に対して、政治家も言論陣もみな臆病になっている、と本書の中で書いている言論者がいたが、まさしくそうだと思う。
だからこそ、ちょっとめんどくさい人、というイメージがついてしまうのかな、と思う。しかも当事者だったらまだしも、このイメージをつけているのが、活動家だったら、やりきれない気持ちになるのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月31日
読了日 : 2022年5月31日
本棚登録日 : 2022年5月31日

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