大学・中庸 (ワイド版岩波文庫 228)

  • 岩波書店 (2003年7月16日発売)
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2015.6.16中国の科挙の試験にも使われた、大学、論語、孟子、中庸の四書の一冊。ここでは朱子学に沿ってこの順で読もうと思うのでまず大学を読んだ。儒学の入門として、四書のうちまず最初に読まれるものとあって、広く浅く概要を、しかし理路整然に書かれていてわかりやすかった。修己知人、己自身を修め、そして人、つまり国を治める。そしてそれはすべて、至善に止まる、つまり最高善、形としては他のため、それを自らの喜びと満足感を持って体現すること、ここに人間の立ち位置を置くべきとしている。太平を治めるには国を治め、国を治めるには家を治め、家を治めるには己を修め、己を修めるには心を正し、心を正すには自らを誠実とし、誠実になるには物の道理を知る、つまり理知を鍛えることとする。物事の本と末の順を正しく知ること、また家を治める原則を押し広げて国を治めるという絜矩の道など、学ぶことは多く、また儒学の概要を知ることができた。家を治める原則の応用としての絜矩の道は、現代におけるあらゆる社会団体に使えるのでは。なぜ人間として善く生きねばならなのか、儒学におけるその根本が述べられているように思う。

2015.6.21四書の大学、論語、孟子、中庸の四冊目を読んだ。なんだか、他の三冊と大いに内容が被ってる気もしたが、中庸と誠について述べられていて、それが人の世も越えて万物までも治める的なことが書かれていた。少し理解し難かったので勝手に解釈すると、この本には他の三冊で書かれていたことを、体現するための前提が書かれていたように思う。大学にして修己知人と至善止、論語と孟子にして修己と知人の具体的な徳目、そして中庸にしてはそれら徳目の程度、つまりそれらを見極めるためには善悪を知り、それを実践して誠実になる、ということである。善悪とは、徳と不徳もそうだが、過ぎたるは及ばざるが如しとも言うように、徳が暴走してることも徳がないのと同じなのである。よってその中道を知り、守ること、その根底には善悪の知識と、それを忠実に実行する誠実さが必要、ということである。知識と誠実さが基準と原動力となり、それにより仁義を内面化し、よって己を修め、結果人を治める、という流れだろう。またこの四書を貫いているものとして、天という存在、天が作った人間の善を体現するという思想があることも見て取れる。人事を尽くして天命を待つと言うが、天に与えられた人間の本質として、何が人間にできるのか、どのように人間は生きるべきか、いかに人事を尽くしきれるかがテーマだったのではないか。四書を締めくくる一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年6月16日
読了日 : 2015年6月16日
本棚登録日 : 2015年6月16日

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