盤上の向日葵

著者 :
  • 中央公論新社 (2017年8月25日発売)
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本棚登録 : 140
感想 : 11
5

今年の本屋大賞で次点に付けた柚月裕子作品。
基本、僕の柚月裕子に対する興味は本屋大賞のノミネー
トから始まっているのだから、ここに来てようやく本命
に辿り着いた感。

七冠王を目指す将棋界の重鎮に挑むのは、養成組織であ
る奨励会を経ずにプロとなった東大卒・元IT企業の経営
者。その頃、埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見
された。遺体には刺傷の跡があったため、県警は殺人お
よび死体遺棄事件として捜査を開始。奇妙なことに、死
体の側には数百万円の価値がある将棋の駒が一緒に埋ま
っていた。元奨励会員という異色の肩書きを持つ刑事が
一課のベテランと組み、この事件の捜査に当たるのだが
・・・という内容。

この作品を含め、これまで4冊読んだ上での僕の柚月裕子
評はこれしか無い。『誰よりも「漢」を感じさせてくれ
る女流作家』である、と。「漢」は、もちろん「オトコ」
と読んで欲しい。

この直前に読んだ孤狼の血シリーズの2冊は、いわゆる
「任侠」に則った上での漢臭さだったが、この作品に登
場する漢たちで印象深いのは「真剣師」と呼ばれる賭け
将棋の達人たち。財産はもちろん、自らの生死まで賭け
て勝負に挑む彼らの姿には、神々しさまで漂う。将棋モ
チーフの小説だから、棋譜解説の文章も多々出てくるの
だが、その意味が全く解らなくても伝わる緊迫感。この
作家、本当に「恐ろしい」と思う。

さらに、ミステリーとしての組み立てもかなりのレベル。
登場人物の過去が明らかになるにつれ、ジリジリと核心
に迫って行く構成は見事の一言。そして、ラストシーン
はまるで映像のストップモーションを観るかのような臨
場感があった。

作品の持つ魅力は、本屋大賞を受賞した辻村深月の
「かがみの孤城」に勝るとも劣らない。個人的には、こ
ちらの作品の方が強烈な印象を残してくれたように感じ
る。惜しいなぁ、本当に・・・。

とにかくこの作品で柚月裕子は僕の「全冊読む」作家リ
ストに入った。このオトコらしい女流作家、僕は大好き
です!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2018年5月12日
読了日 : 2018年5月10日
本棚登録日 : 2018年5月12日

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