自らの思考の働きが隔壁内外の気圧差によって発生すること、さらに隔壁の内外の気圧差が次第に均衡へと向かっていることをつきとめてしまう、エントロピーを題材とした表題作ほか重厚なSF短編〜中編集。
寡作ながらパワフルで圧倒的なSFを世に送るテッド・チャンの作品、ようやく読めました。どれもこれも非常に重厚で読み応えがあって楽しめました。
印象に残ったのはAIの成長を描く「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」やパラレルワールドもの「不安は自由のめまい」で、使い古された題材ながら掘り下げが深くて楽しい作品でした。一方で記憶を全てストレージが肩代わりする「偽りのない事実、偽りのない気持ち」や、宗教と科学が一元化された「オムファロス」なんかはとても斬新な切り口でやはり楽しませてくれました。
わりとハードなSFに類されるかと思いますが、ひとつひとつのストーリーをじっくり読めてその圧倒的な語り口を楽しめる一冊です。
AIについて、その発生と発達と人間との関わりを描いたマンガ、山田胡瓜の「AIの遺電子」といっしょにお楽しみください。アニメ化するんですって。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年8月20日
- 読了日 : 2023年8月20日
- 本棚登録日 : 2023年8月20日
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