花咲家の旅 (徳間文庫 む 9-5)

著者 :
  • 徳間書店 (2015年8月7日発売)
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感想 : 28
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花咲家シリーズ第三弾。
今回のテーマは「旅」

なるべく遠くへ行くのもいいし、近くでもいいけれど、旅の意義は、日常を離れることだろう。
花咲家は仲のいい家族だけれど、それだけに、それぞれがお互いのためを思い、与えられた自分の役割をきちんと果たそうと無意識に努めている部分もあるだろう。
旅に出て一人になることは、家族には打ち明けられない自分の本当の気持ちと向き合う機会かもしれない。
合わせて、他の旅人のさまざまな思いも知る。


第一話 浜辺にて
店の改修工事のため、思わぬ休日ができた木太郎は、遠い昔の新婚旅行先を訪ねて、亡き妻を偲ぶ。
年老いた人の若き日に向けられた優しいまなざしがいい。

第二話 茸の家
白猫のお譲ちゃん・小雪の冒険譚と、一人ぼっちのお婆さんに寄り添う、故郷を遠く離れたものが抱く想い。

第三話 潮騒浪漫
今の自分の在り方と将来に悩むりら子。
子供たちに聞かせる、父・草太郎の冒険譚。
どうも、草太郎はファンタジーと一番近い所にいる人である。

第四話 鎮守の森
陸路半日かけて、遠い親戚が住むという街に旅したりら子。
旅から帰れなかった男の、家族を守る大きな愛。

第五話 空を行く羽根
茉莉亜は謎だ。自分のために旅することはないのか、やはり、茉莉亜の一番の旅は、母に反発して家を出ていた時代なのだろうか。
すでに、見守る人、母視点になっている気がする。
若い才能の羽ばたきを見守る。

第六話 Good Luck
桂も、飛び立つ前の人である。
そして、旅人ではなくなった人と、空港で出会う。

人生は終わりを迎えるまでのすべてが旅。
かなわなかった夢も、悔いの残る出来事も、消してはいけない、価値のある道程の一部分なのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年5月12日
読了日 : 2018年5月12日
本棚登録日 : 2018年5月12日

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