戦場のコックたち

著者 :
  • 東京創元社 (2015年8月29日発売)
3.80
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本棚登録 : 2246
感想 : 354
5

いくつかの要素を持った作品だ。
①戦争もの
②謎解き
③青春もの
④友情もの
表紙のイラストはセンスが良く、食事を連想するものだし、タイトルが“コックたち”だが、“戦場のグルメもの”ではない。
むしろ不味い。
粉末卵最悪!(笑)

主人公・ティモシー(ティム)・コール。アメリカ人。
おばあちゃんのレシピ本を眺めるのが好きだった。
世界恐慌で経済が破たんし、やがて第二次世界大戦に突入すると、彼は軍に志願することを考える。
愛国心はもちろんあったが、安定した給料をもらって家族を支えたい、戦死しても見舞金は出るだろう。そして、徴兵ではなく志願で入隊した方が、ボーナスが50ドル多く出てお得。そして少しの英雄願望。
それが理由。
決して彼が軽かったり甘かったりと言うわけではなく、若者たちの志願理由はだいたいそんなものではなかっただろうか。

ヨーロッパ戦線が舞台となる。
ノルマンディー上陸作戦から始まり、数々の悲惨を見届けなければならなかった。
初陣の恐怖から、いきなり放り出される目を覆うような酸鼻、世話になった人との別れ、生死の明暗を分けるちょっとしたタイミング。
どこかで慣れていく部分と、どうしても慣れない部分。
彼が「なぜ戦うのか?」と自問し始めるのは、だいぶ泥沼にはまってからである。

戦争ものを読み終わる時…
終戦の瞬間の安堵感、帰還した兵士の「自分は故郷の人たちとは違ってしまった」という疎外感、失った仲間ばかりに思いが向く、そして虚しさ。
何度もそういったものを感じるのだ。

プロローグ
ティムがコックとして配属されるまで。

第一章 ノルマンディー降下作戦
ティムたち特技兵(コックも含む)は戦闘ももちろん行うが、主な任務は「支援」
「サポーティング・ヴィクトリー!(勝利を支えよ)」を胸に、緊張で震えながら降下するが、いきなり友軍の死体を踏みつける。
・ライナスが大量の使用済みパラシュートを回収しているのはなぜか。

第二章 軍隊は胃袋で行進する
後方の野戦基地で給養。
・徴兵ポスターなど、軍の広告モデルを務める、いけすかない美男・ロス大尉と、粉末卵がいきなり600箱も無くなった謎。
有色人種差別。

第三章 ミソサザイと鷲
オランダで市街戦。
コックの仕事はなく、戦闘に専念する。
待機のために家を貸してくれたおもちゃ職人夫妻の秘密とは?
ヤクトパンターの脅威。

第四章 幽霊たち
幽霊を見るのは、多くの人間を殺しても罪を忘れていない証拠なのか。

第五章 戦いの終わり
途中からコック仲間に加わった、ダンヒルの秘密。
友情が試されるとき。

エピローグ
ベルリンでの再会。

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途中から死亡フラグが読めるようになり、つらくてしかたなかった。

メガネはどこに消えた?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月8日
読了日 : 2017年8月8日
本棚登録日 : 2017年8月8日

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