村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

著者 :
  • 岩波書店 (2016年3月24日発売)
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感想 : 89
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伊藤野枝をご存知でしょうか?

何を隠そう私は知りませんでした。
皆さんも知りませんよね。

3人目の子供が女の子だったらのえという名前をつけようと決めていました。
オアシスのノエルギャラガーにちなんで。

なかなか被らない良い名前かと自負していたところ、私の周りで2人だけある女性の名前を口にしたのです。

『のえって、大杉栄の愛人の?』

知りません。
なんなら大杉栄も知りません。
すいません、不勉強で。

その2人は、義理祖母と弟でした。
2人の共通点は読書量の多さです。

それにしても聞きづてならないのは、『愛人』という点です。愛する我が子の名が、誰かの愛人(歴史的愛人)の名と重なっているなんて!

愛人のレッテルは強烈ですが、どういう経緯で?という事で、本を手に取りました。

読んでわかったのは、愛人というレッテルは伊藤野枝の知性と先見性、行動力を疎むあまり、その存在の都合の悪さ故に、貼られたレッテルだったいう事です。

著者がかなり伊藤野枝のことが好きなことが読んでいてわかりますが、そのおかげもあって私もかなり魅力的な人物だと感じました。

確かに、本能のまま破天荒な人生を歩んでいる部分もありますが、言ってること、やってることはかなりまともだと思います。

それも時代が今と全然違う、世の中の女性に対する考え方が今とは比べ物にならないくらい疎かにされている環境の中、その地位向上(←こんな表現すらないくらいの時代に)のために必要な発言をし、行動をする。喧嘩を売りまくる!

彼女やその周りの仲間たちが作り上げたものが、その後の基礎になっているように感じます。

関東大震災の混乱に乗じて暗殺されますが、やはりその先見性を疎まれ、怖がられていたのだと思います。

死をも恐れず、女性の地位を、人権を、そして個の存在を主張し続けた、こんなロックな人は他になかなかいないかもしれない。

我ながら良い名前をつけたものだ。

愛人?
アナキスト?
ふん、なんとでも言いなさい、あなたがなんと言おうと、私はのえちゃんなのよ!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年11月12日
読了日 : 2019年11月10日
本棚登録日 : 2019年11月10日

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