イスラームから見た「世界史」

  • 紀伊國屋書店 (2011年8月29日発売)
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感想 : 46
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西洋的モノの見方を学んだアフガニスタン人が、ムスリムの立ち位置から世界史を記した本。
まず、上記の通り二通りの視点を有することで、半分西洋的な見方を学んでいる我々日本人にも違和感のない語り口で、イスラームの見ている世界史を解説してくれている。今まで見たことのない世界をわかりやすく解説してくれているのだ。イスラーム関連史など、高校の世界史の授業で単語を学ぶレベルか、ダイジェストでサラっと浚うのが関の山であるが、ここまで細かいものはほぼないであろう。近世以前の歴史において、如何にイスラームが発達していたか、またイスラームが宗教だけでなく、文化であり、文明であり、社会制度であった(そして世俗権力と宗教的権威の対立の根深さ)ことがよくわかる。そして何よりも近現代において、本書の真骨頂となる。なぜいつまでたってもイスラームを旗印にする武装勢力がいなくならないのか、オイルマネーを武器にする中東諸国の内実とは何か、フセイン死後のイラクがなぜあんなにも混乱を続けるのか、また、本書執筆以降の話ではあるが、アフガン政権はなぜタリバーンに負けたのか、なぜチュニジアの春は失敗したのか。イスラーム世界内の対立を知ることで紐解ける。そして、現代のイスラームを知る上で避けては通れない西洋との関係。ここで我々は如何に自分が西洋的視点でしか見てこなかったか、ということを思い知らされる。そして、さらにイスラームと西洋の間だけでなく、改めて世界には全く異なる視点が存在すると言うことを改めて思い知らされる。昨今の世界情勢において、様々な視点があることを学び中立的観点から分析し、他者を理解することの重要性を改めて学ばせてくれる名著といえよう(ただし私は、分析は中立的に、決断は恣意的に行うべきであると考えていることをここに記す)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年4月25日
読了日 : 2022年4月25日
本棚登録日 : 2022年4月25日

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