時計じかけのオレンジや未来世紀ブラジルのように有名なものしか知らないけれど、昔の人が描く未来というのは面白い。
科学技術がへんてこな方向に進化していて全然スマートじゃなかったり、政治が極端な絶対主義や管理社会になっていたり、人々が浅はかで考えなしで訳のわからない社会を喜んで受け入れていたり。その違和感が面白いんだと思う。
この作品もそう。あらゆる少数派を考慮した結果本の存在が抹殺された社会という設定にもかかわらず、一方で人々はスリル満点のデスゲームに興じ平気で命を落としていく。戦争がはじまるのにまるで危機感がない。
どうなってるんだ、昔の人はなんでこんな未来を想像してしまうんだ?と思うけれど、よくよく考えるとまさに今の社会は自然とそういう方向にすすんでいるんだと気づかされる。
いい歳こいて電車で漫画ばっかり読んでるおじさん。バブルランやらハロウィンやらのバカ騒ぎとツイッターでのアピール。大衆的で、享楽的で、自分の世界しか見ていないカラッポなリア充。
中東かどこかで戦争が起きようがそんなこと知らない。これは本に描かれた極端な未来に結構近い。
そういう意味では、単に面白いSFというだけだなく、この小説はメッセージ性が強く、まさに燃やさず記憶していくべきなんだろうと思った。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年2月19日
- 読了日 : 2016年2月19日
- 本棚登録日 : 2016年2月17日
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