何もかも憂鬱な夜に

著者 :
  • 集英社 (2009年3月5日発売)
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感想 : 184
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タイトル通り、明るい話ではないのですが、いい本を読ませてもらったなぁと、不思議と心地好くなりました。
自分の抱える暗く澱んだ、公言したくないモノを、自分じゃない誰かも…もしかしたらたくさんの人も覚えがあるのかもしれないという、安心感。私は死の衝動というものを外に向けることは全くないしこれからもないと思うけど、純全なる善意というものにとても憧れた。(ここは『人間失格』にも通ずる何かがある)
真下のノートに、少しでも共感を覚えない人間になりたかった。そうだよね。そうだよ。フルバの透君みたいになりたかったなぁ。
13階段を読んで以来、死刑という言葉をニュース等で聞く度、刑務官のことを含めちらと考えるようになった。普通の人間に、人間を殺すということは多大なストレスがかかるはずだと。個人的に死刑制度には賛成派ですが、執行する側の気持ちは?とか、本当にそれが最適な刑に成りうるのか?とか。
結局のところ、本書に出てくるように、生殺与奪の権を本来人が持つべきではないから、矛盾がどうしても出てくるようになっているのだろう。…割り切れないように、そしてだからこそ、誰かが考えつづける問題であるべきなのだろう。
年若い人間が犯すという理由で刑が軽くなるのは納得できないと思う。だけど、与えられた時間が少なく、得るものを得るための時間が充分に無いまま死刑になるのは、極刑であるはずの死刑の意味も軽くなってしまうのではないかな。
…刑は結局の所、罪への罰でなく、善良な市民への戒めや、報復の代行にならざるを得ない気もする。…難しい問題。

中村さん、『掏摸』という本が気になっていたので見覚えはあったのですが、初読作家さんだったのです。『第二図書係補佐』で紹介され、読む機会を作れました。又吉さんに感謝。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説【借り物】
感想投稿日 : 2011年12月17日
読了日 : 2011年12月17日
本棚登録日 : 2011年12月13日

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