著者 :
  • 講談社 (2015年5月13日発売)
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R3.6.1 読了。

 1975年、台北。内戦で敗れ、台湾 に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす17歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。第153回直木賞受賞作。

 以前から気になっていた。序盤はなかなか読み進まず、時間がかかってしまった。
 主人公の祖父を殺したと思われる犯人の目星のついたあたりから一気に面白くなった。日中戦争、中国と台湾の関係性などの歴史についても触れられており、勉強にもなった。あの戦争がなければ、生まれなかったストーリーなのかもしれない。幽霊騒ぎ、ヤクザにさらわれた友人奪還のための抗争や幼馴染との淡い恋など、設定はとても興味深く、内容も面白かった。
 ただ、自分は外国人の名前を読むのが苦手なことを痛感した。今回のこの作品でいえば、全部の漢字の名前にルビをつけるかカタカナ表記にしてほしいとさえ思ってしまった。

・「『魚が言いました…わたしは水のなかで暮らしているのだから、あなたにはわたしの涙が見えません。』王璇:「魚問」より」
・「人の世はもとより苦しいもの、早く悟れば傷つかずに済む。」
・「ささいなことで自分のかわりに怒りをぶちまけてくれる者がいると、わたしたちはいつでもすこしだけやさしくなれる。そういうものなのだ。」
・「心から願うものが手に入らないとき、わたしたちはそれと似たもので満足するしかない。もしくは、正反対のもので。そしていつまでも、似たものを似たものとしてしか認めない。それを目にするたびに、妥協したという現実を突きつけられる。だけど、ほとんどの人は気づいていない。その似たものでさえ、この手に掴むのは、ほとんだ奇跡に近いのだ。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作家名
感想投稿日 : 2021年6月1日
読了日 : 2021年6月1日
本棚登録日 : 2021年5月10日

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