さよならドビュッシー (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 6-1)

著者 :
  • 宝島社 (2011年1月12日発売)
3.81
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本棚登録 : 15299
感想 : 1667
5

R3.5.2 読了。

 読み終わったいま思うことは、なんでもっと早く読まなかったんだろうということです。この小説は音楽やクラシックのことを全然知らない私でも読み始めたら、作品に引き込まれるように一気読みしてしまった。
 他の方のレビューにもあったように、ピアニストのコンクールにかける姿勢は、まさにスポコンもの。主人公を応援したくなる。この作品は「このミス大賞」に輝いた作品であるが、私は正直ミステリー要素がなくとも楽しめたと思う。
 途中、火事のシーンから病院を退院するまでのシーンは、主人公のつらさや苦しさにも触れなければならず、読み進めるのが正直しんどかった。
 身体に障害があっても学校でいじめにあっても、ピアノを弾きたいと頑張っている姿には勇気をもらった。岬洋介の存在は本当に大きい。
 ミステリーということで最後に犯人が明かされるが、見事に騙されたという驚きと良かったというホッとした気持ちと悲しみなどが入り混じり、自分の気持ちが作品に追いつかず。カエル男も好きだけど、このドビュッシーも大好きな作品になりました。

・「苦難はそいつに与えられた試練や。艱難汝を玉にす。乗り越えられた者は強くなるし、乗り越えられなかった者はそこで押し潰されて終わる。」
・「自分の不幸や周りの環境を失敗の言い訳にしたらあかん。前に進むのをやめたらあかん。目の前に立ち塞がるものを恐れて逃げたらあかん。逃げることを覚えると、今度は余計に怖くなる。…(中略)不幸とか、世の中の悪意に負けるんやない。そんなもん、ばあんっと撥ね返してやれい。」
・「重要なのはその人物が何者かじゃなく、何を成し得たか。」
・「人は誰もが欠陥を持っている。ただその欠陥がなんであるのか、その欠陥が見えるものなのか見えないものなのかという相違だけだ。だから皆その欠陥を修復するかまたは他の長所で補おうとする。」
・「全ての闘いは詰まるところ自分との闘いだ。そして逃げることを覚えると余計に闘うのが怖くなる。」
・「人を殺すのに刃物は要らない。希望を奪うだけで人間は内側から死んでいく。」
・「世界は悪意に満ち溢れている。それは、その攻撃に晒されて初めて気付くことだ。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作家名
感想投稿日 : 2021年5月2日
読了日 : 2021年5月2日
本棚登録日 : 2019年12月27日

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