以前読了した「和菓子屋の息子―ある自伝的試み」の焼き直しに一部加筆した程度の内容で、またか、という印象。小林氏のことは嫌いじゃないし、戦前の東京下町の風俗が知れる回顧録はそれなりに面白いんだけど、彼のごく個人的な過去や血族への飽くなき執着と形ばかりの遠慮でそれを一般読者に読ませようとする素人臭い厚顔さ、果てはそんな代物を「叙事詩と受け取って欲しい」などという爽快なまでの勘違いも、もはや呆れるまでもなく大御所の気ままな繰り言と介護士ばりの微笑で受け流すべきなんだろうなぁと巻を閉じれば、氏の新刊を楽しみに追う自分の気持ちにまで疑問を差し挟んでいることに鼻白む己に気付くのである。
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- 感想投稿日 : 2010年6月7日
- 読了日 : 2010年6月7日
- 本棚登録日 : 2010年6月7日
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