創竜伝(12) 竜王風雲録 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2003年8月8日発売)
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感想 : 27
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田中芳樹氏、趣味に走る。
宋の時代に舞台を移し、竜堂兄弟が躍動する。登場人物は竜堂兄弟(本作は彼らの正体である竜王の名前での登場だが)と大真王夫人以外は歴史上実在した人物達で彩られ、中国歴史小説である。つまり本作は外伝に当るであろう。
本作が上梓された頃の田中氏の活躍の舞台はファンタジーや戦記物よりも寧ろ中国歴史小説、特に史上の英雄たちを描く事に腐心しており、今回の創竜伝もその延長上で書かれたようだ。憶測するに、創竜伝の新作の執筆を依頼された時に、興味が中国歴史小説に偏っていた作家が当時のマイブームと実益を兼ねて勢いに任せて書いたのではないだろうか。エンディングの最後に急に現代の物語で締め括られるのがその証左であるように思えるのだが。
内容はしかし、面白くはあった。宋という史上ではマイナーな時代を舞台にその豊富な知識をベースに様々なエピソードを語り、興味を尽かせない。しかし、このことは裏返せば、作者の見聞き知った知識を存分にお披露目したに過ぎず、小説の結構としては二流の部類に入るだろう。それでも一般の読者をも愉しませる技量は賞賛に値する。
そろそろ創竜伝も佳境に入ったことだし、他の諸作品群とは例外的にきちんと最後まで完結していただきたい、願うのはただそれのみである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2020年11月3日
読了日 : 2020年11月3日
本棚登録日 : 2020年11月3日

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