さるのこしかけ (集英社文庫)

  • 集英社 (2002年3月20日発売)
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感想 : 317
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前回『もものかんづめ』は前半その面白さに抱腹絶倒したが後半、どうにか笑わせようというあざとさが目につき、ちょっと辟易した。
しかし、今回は同じような趣向であるにも拘らず、そういった作者の恣意が露顕せず、純粋に面白かった。
思うに、前回の『もものかんづめ』に関しては作者の初エッセイであった。つまり漫画家としてのさくらももこが書いたエッセイだったので、漫画で見せるかのようなギャグのエッセンスをそのまま導入するという稚拙な技術しか備わっていなかったのではないか。即ち、ギャグマンガとしてのギャグは漫画という視覚に訴える分、過剰であればそれだけますます引立つが、文章のみでそれをやると直接的に伝達する分、変に過剰な効果を生み、あざとく感じられる。
しかし、今回は早くも2冊目にして漫画家さくらももこの書いたエッセイではなく、作家さくらももこのエッセイになっている事に素直に感心した。この変化は大きい。
つまり過剰さが消え、文章の無駄な贅肉が無くなり、非常に洗練された内容になっているのだ。だからギャグが不意を打つように突然飛び込み、それがために非常にウケた。
また中には作者の心情をストレートに表現したエッセイもあり、この辺が作者の素顔の一面を覗かせ、等身大の人間としてのさくらももこを感じることが出来る。

いやぁ、しかしこの人の周りにかくもおかしな人々、事件、物が集まってくるのかしら。遭遇する本人は大変かもしれないが、一個人としては毎日に刺激があり、非常に羨ましい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2020年12月2日
読了日 : 2020年12月2日
本棚登録日 : 2020年12月2日

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