博識家紀田順一郎が放つビブリオ・ミステリ、私が呼ぶ所の「神田神保町シリーズ」もこれで三冊目。
いつも卒業しようと思って読むのだが、なぜか愛着が湧き捨てられず、本棚の一角を占有することになってしまう。恐らくは文庫専門とは云え、本を収集する身である私と登場人物との間に一部共感できる部分があるからだと思う。
今回はミステリというよりも寧ろ題名から察せられるようにビブリオ・コン・ゲーム小説といった方が妥当だろう。最後に百貨店での古典市での出来事及びクライマックスの笠舞邸での競り勝負の真相が明かされるミステリ的な要素はあるが、主眼は後継者争いとしての古書収集にある。
但し、一冊一冊白熱した奪い合いが見られるわけではなく、大半はいつの間にか蜷川、倉島がそれぞれ手に入れているといった趣向で進められるため、その辺がこちらが期待していたよりも興味は半減した。
しかし作者は色々な趣向を凝らしてあるのも事実で、この中のエピソードには実際あった事件も含まれているのだろうと思われる。
物語としてはいささか地味だったけれども、久々このような現実感の濃い小説が読めて気持ちがよかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ&エンタテインメント(国内)
- 感想投稿日 : 2020年4月15日
- 読了日 : 2020年4月15日
- 本棚登録日 : 2020年4月14日
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