時間の砂 下巻

  • アカデミー出版 (1989年10月1日発売)
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感想 : 3
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シドニー・シェルダンの描く世界は当時高校生の私には全てが未知であり、全てが新鮮に映った。冒頭の牛追い祭の荒々しい始まりから、静謐な修道院での生活へと動から静へ移る物語の運び方は話の抑揚のつけ方としては抜群であるし、今読んでも引っ張り込まれるだろう。

本作でスペインの複雑な民族事情を知ったのはまさに幸運だったと云える。その後の人生で折に触れ、このバスク地方とスペイン政府との抗争に触れる機会があり、この本を読んだことが予備知識となり、理解が早かったからだ。知的好奇心に満ちていた高校生の頃に読んだというのもまた最良の時期だったと思う。

そして本作から私は自分の小遣いでシェルダン作品を買い出した。それは確か学年が変ってクラス替えがあり、K君とは一緒のクラスにならなかったからだと思う。そして私が買った本を弟はもちろんのこと、両親まで読み出す始末。しかし当時は自分でハードカバーの本、しかも外人の書いた小説を買うことが自分の中で大人の第一歩という一種のステータスのようになっていたように思う。そして本作がその対価に見合った作品だったのだから、小遣いの使い道としては良かったわけだ。

しかし今まで作品はタイトルが作品を表していることは解ったが(『ゲームの達人』も高校生の知識でもおぼろげながらも理解できた)、本作は解らなかったなぁ。この後続く作品はそんなことなく、上手いタイトルだなと思ったが。今読んだら解るのだろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ&エンタテインメント(海外)
感想投稿日 : 2016年9月2日
読了日 : 2016年9月2日
本棚登録日 : 2016年9月2日

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