1749年に生まれ1832年に死去したゲーテの生涯の叙述が本書の中心であるが、ゲーテの作品解説というよりも、ゲーテの伝記的事実や作品から読み取ることのできる社会状況や政治状況についての叙述に比重が傾けられている。本書を通底する歴史観は、R. コゼレックによる「はざま期」(Sattelzeit)という時代規定、すなわち、1750年から1850年にかけての時期に、ドイツは古いものと新しいものが交錯する近代への移行期を迎えたという規定に基づいている。その意味で、啓蒙絶対主義から1848年革命に結実していくような大衆政治運動までも目撃したゲーテは、このような「はざま期」を描き出すのに格好の人物である。そのゲーテが同時代の動向に対して時に順応しつつ(政治家としてのゲーテの側面の紹介もかなりなされている)、時に拒否反応を示していた(ゲーテの貴族観とフランス革命に対する拒否反応)経緯が極めて整理されたかたちで叙述されている。
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- 感想投稿日 : 2015年3月20日
- 読了日 : 2015年3月20日
- 本棚登録日 : 2015年3月20日
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