新装版 野性の証明 (角川文庫 も 3-59)

  • KADOKAWA (2004年7月25日発売)
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本棚登録 : 244
感想 : 30
5

小学校から高校までの間に二桁は余裕で読んできて、何がそんなに面白かったのかな?と読み直した。

羽代市で保険の営業を行っている味沢は、村中の住民が惨殺された柿の木村の生き残りの、長井頼子を引き取ってほそぼそと暮らしている。しかし羽代市は、ヤクザと、その取り巻きが警察までを取り込んだ、腐敗した街だった…。

うん、面白い。というか、森村誠一文学(というものが有るのなら)の、集大成とも言える作品である。

森村作品でよく出てくる、ヤクザに牛耳られて自由のない街、住民が蹂躙されるのを見て見ぬ振りをする市民、残存する証拠、悪の組織自衛隊から来た殺人者、超能力、心理テストなど、登山以外のありとあらゆる要素が全て詰め込まれた作品である。面白くないわけがない。

映画で知っている人もいるかも知れないが、一章一章に何らかの新しい内容と仕掛けを取り入れ、かといって狙いのわからない部分(頼子を引き取った理由など)はぼかして引っ張るなど、非常にバランスの良いストーリー配分であろう。

内容は、ヤクザが起こしたちょっとした不祥事を暴くところから、どんどん大きな事件に向かっていくなど、冒険小説やハードボイルド要素が大きく、あまりミステリという感じはしない。

最後に呼んだのが中高生時代ということも有るが、誰がどうするのかということは覚えていたが、細かい要素は忘れていたので、それなりに楽しく読めた。

終盤で、北野がやたらと味沢を捕らえようとすることや、その後の説明などが、ちょっとくどいと思えたこと、そもそも厚くなっていることから、過去に読んだものに加筆されているのかもしれない。

森村誠一を1冊選べと言われれれば、これです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ハードボイルド
感想投稿日 : 2021年10月7日
読了日 : 2021年10月7日
本棚登録日 : 2021年10月7日

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