タイムマシンについて公演するムテン博士。いろいろな事例を上げたところで、ある男を演題に呼ぶ。男は昨日ムテン氏を殺そうとしたらしいのだが、その理由がその日のうちにムテン氏が事故などで死ぬという記録に従うべきだという未来人だった…。
傑作『マイナス・ゼロ』の広瀬正の書く、タイムマシン物を集めた短編集。タイムマシンの構造から、タイムパラドックス、親殺しのパラドックスなどありとあらゆるタイムマシン作品を集めたもの。
表紙が和田誠だったり、タイムマシンと関係のないショートショートが載っていたりと、星新一を彷彿とさせる作品が多い。数作に置いては、2つのシーンを同時に描くという、本を上下2段に分けるという荒業をやっており、電子書籍泣かせの実験作を含む。
しかしながら、星新一のように大きなストーリーだろうと高をくくって読んでしまうと、けっこう細かい内容だったり、日露戦争の海戦については、ある程度の知識を読者に読み取ってほしいと思ってるんだろうなあというようなものもある。
少なくとも、タイムパラドックス系は、本人も紙面上でこねくり回して、自分の中でもディスカッションしつつ楽しんでいるのだろうなというところもあり、サラッと読むと、あれ?なんだっけ?となる作品も多い。
ただ、全体にドライだがしっかりした骨を持った作品ばかりであるので、それぞれ短いなりに、かなり読み応えはあるだろう。
難を言うなら、タイムマシンものばかりというのが、ちょっと辛いかな。
ハインラインの入手困難らしい作品『時の扉』の解説は、流石に飛ばした。原作を読めればいいんだけどね。
解説は筒井康隆によるかなり重厚な広瀬正論で、SF読みにはかなり嬉しいのではないか。
ただひとつ、「H・G・ウェルズ」のH・Gが「ヒラガ・ゲンナイ」というオチを期待してしまった…。
- 感想投稿日 : 2023年7月14日
- 読了日 : 2023年7月14日
- 本棚登録日 : 2023年7月14日
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