秘録東京裁判 (中公文庫 M 309)

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  • 中央公論新社 (1986年7月1日発売)
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第二次大戦後の東京裁判で弁護を行った著者によるドキュメント。旧政府側の立場にバイアスがかかっている傾向はあるものの、だからといってリベラルな人も読む価値がない時って捨てるような内容ではなく、東京裁判の問題点をわかりやすく理解するには格好のものであろう。

個人的に歴史物は苦手であるのだが、読み出したらわかりやすい文章も手伝って非常によく理解できる。ほとんどの項が東条英機を中心とした、A級戦犯に係る話なのであるが、A級戦犯の罪状は事後法として定められ、東京裁判以降には一件も同等の罪状での処罰された者はいなかったという点は、法学からしても議論の余地がある。

実際に携わった複数の裁判官も、無罪を指示ということで、現在の憲法でも、世界的な常識にも鑑みて、事後立法での処罰の異常性は知っておくべきであろう。

また、東京裁判やドイツのニュルンベルク裁判は、「日本とドイツの戦犯」を裁くと理解してきたが、実のところ全ての戦争犯罪が裁かれるべきであった。しかし結局、勝てば官軍で、報復としてしか機能しなかった。その辺りも含め、「学校では現代史をやらない、そこが一番知りたいのに」って、そこを掘り下げたら、リベラル側にもアメリカ側にも、まずいことがいっぱい出てくるんですよね。

しかしね、捕虜収容中に注意を換気するためにちょっと小突いたり、捕虜と言い争いを1回やったり、果てには食べ物が少なくて粗末な飯しか出せなかったり、ごぼうを食わせたというだけで、「捕虜の虐待容疑」でC級戦犯で実務者が死刑って、戦勝国による正義ってなんなんですかね?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドキュメンタリー
感想投稿日 : 2015年4月16日
読了日 : 2015年4月16日
本棚登録日 : 2015年4月16日

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