ヒューゴー賞受賞のムアコックの傑作だそうである。あらすじは読まないが、表紙に書いてあるので。
小心者で真面目な少年時代、女の子と付き合いたいがそんな勇気のない青年期、キリスト教からユング、そして邪教に継投した成人期という、どこにでもいるカール・グロガウアーは、タイムマシンの試作品のテストパイロットとして、西暦28年、イエス・キリストの磔を見るために向かったが、そこには思っていたイエスは存在しなかった。
あらすじもオチも同じなので、話としては上記の通り。賢明な方であれば、全てお見通しであろう。そういう話だ。
聖書から引用し、ニーチェの著作と同じタイトルであるゆえ、スタートは違えども、聖書の範疇からはほぼ逸脱しないのであろう。ヨハネと出会い、期待を裏切ってナザレのイエスを探しに向かう。そのあたりの紆余曲折は、以外なほどにあっさりした描写であり、メインなのはタイムマシンで飛ぶ前の話なのかしらん。
☆2の理由は、ひとつはやはりキリスト教(特にカトリック)の考え方が、我々にはさほど思い当たるところがないために、特に現代(二十世紀)の描写に、なぜ怒っているのか、それに対する切り返しの意味がわからないというところにあるだろう。
また、主人公カールに合わせた感情的な文章が、どうもしっくり来ないんだよね。リズム感というか。
「ジーザス・クライスト ○○スター」などのパロディともちょっと趣がことなる作品である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF
- 感想投稿日 : 2018年6月7日
- 読了日 : 2018年6月6日
- 本棚登録日 : 2018年6月6日
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