去年を待ちながら (創元推理文庫 696-1)

  • 東京創元社 (1989年4月21日発売)
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本棚登録 : 180
感想 : 12
1

夏のディック祭。ディックの作品に☆1を付けると、絶対的な信者から脅迫を受けそうだが、あえて1つ。

星間戦争中、なぜか地球代表の国連事務総長の主治医を任されたある医者が、妻が手に入れた時間跳躍ができるようになる非合法麻薬 JJ-180を使ってあっちこっちに飛び…という、テンヤワンヤ系のSF。

宇宙船、未来都市、星間戦争、タイムトラベル、パラレルワールド等、詰め込むものは詰め込みましたという作品だし、「アルファ・ケンタウリ」など、SFマニアは引っかからざるをえないキーワードも満載なのだが、とにかく読みにくい。

JJ-180が出てくるまでは、個人名のファーストネーム、ラストネーム、ニックネームなどがポンポン飛び交い、特に会話でほぼ名前だけというのには閉口する。

JJ-180以降は読みやすくはなるのだが、事務総長と会話している途中で、そこにいない人との会話が挟まったり、他人の病状について1ページ以上にわたって記載されたりと、訳以前に、原文の組み立てが今ひとつなのであろう。

タイムトラベルからパラレルワールドに入り込むあたりは面白いが、いかんせん詰め込みすぎて消化不良。訳者あとがきで、訳者自体よくわからなかったと記述しているが、訳もストーリーも最近読んだ中では一番ひどかった。

巻末に、解説代わりの資料でディック本人が代表作について述べており、本作は「『電気羊』と並んで良く書けた」と自画自賛しているが、どうなんだろ?

2回目に読んだら、登場人物の把握が先にできている分、印象が少しは変わりそうな作品だけど、もう一度読みたいかと言われると、ウーン…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2015年8月21日
読了日 : 2015年8月21日
本棚登録日 : 2015年8月21日

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