わたしにとって乙女とは、少女でも彼女でもない。女性という響きとも全く違う。
毒々しいほどの深紅の薔薇。指先をのばせば突き刺すのは神経を麻痺させるような棘。
おいでおいでと手招きされるのに、近づけば心臓を引き裂かれるようなダメージを笑いながら与えられる。
そんな乙女には滅多にわたしは出会わない。
あくまで、わたしの思い描く乙女は!だけどね。笑
乙女という生き物は、日常から遮断された、独特な空気感漂う世界に存在しているんだと思う。
その世界では、しらけた真実は必要ない。
真実を持ち出すことほど、“あほ”なことはない。
噂のなかで、乙女は華やかに舞い、胸をときめかせる。
バッハマン教授がみか子に語る、「一九四四年四月九日、日曜日の夜」
わたしの頭の中で、ぐわんぐわん響きながら、走馬燈のようにゆっくりゆっくりと回転する。
アンネ・フランクはこの夜、本当に無事でしたか。
本当に命拾いしましたか。
真実を語ったのは誰か。それは密告者。
乙女にとって、真実は禁断の果実なのです。
それでも、真実は必要なのです。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学:著者あ行
- 感想投稿日 : 2014年12月19日
- 読了日 : 2014年12月19日
- 本棚登録日 : 2014年12月17日
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