群青天鵞絨色の天幕が降りる。今夜もブリキの月と貝の星が煌めく夜。深い眠りにつくまでの微睡みのなか、私はモルタル二階建ての校舎の前に立っている。仄かに明かりが灯る理科室。夏と秋とがすれ違う噴水池に浮かぶ銀の実。水盤上の水鳥は宙を泳ぎ蛍星は消えてしまった。私は裸足でたっているのだけれど、吹く風の冷たさも踏みしめる砂の痛さも感じない。ただ、月が天蓋を這っていくなかぽつりと佇んでいる。誰にも秘密。私だけの物語。
読書状況:読み終わった
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日本文学:著者な行
- 感想投稿日 : 2015年11月4日
- 読了日 : 2015年11月4日
- 本棚登録日 : 2015年10月24日
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