この何かを忘れているような気持ちにさせられる不安定さが何故だか心地良かったのです。
ずっとこのまま眠っていたいような。ずっとこのままこの場所にいたいような。少しの罪悪感を背負いながら、インドという無秩序で神秘的な国の夜に永遠に抱かれていたい、そんな気持ちにさせられます。
バス停の待合室で会った美しい目の少年。その少年に背負われた兄。その2人との遣り取りから主人公の探している友人の輪郭がうっすらと見えてきたようで、この場面とても印象に残りました。
主人公は友人を探すために様々な人々に巡り会いながら歩きます。2人の関係はまるで、写し身が魂を求めるような、魂が写し身から逃れるような、インドの夜が魅せる幻惑のようでした。そしてそこにはいつもノクターンの調べが流れているかのよう。
須賀淳子の訳がとても読みやすくて、どこにも引っかからずにすっと物語の世界へ入っていけました。読み終えた後もゆらりゆらり夜を漂っている感覚に陥ってしまいます。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
イタリア文学
- 感想投稿日 : 2018年10月7日
- 読了日 : 2018年10月7日
- 本棚登録日 : 2018年10月7日
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