あのリカが十年の沈黙を経て復活した。という触れ込みだ。
前作「リカ」の作品に登場した菅原刑事は、見てはいけないものを見て発狂し心が壊れた。
今は、恍惚の人となり治る見込みのない入院生活を送っている。そこにある女性刑事が以前菅原刑事に、入庁してから一年余り世話になった関係で、毎月一回の見舞いはもう十年になる。
梅本尚美は、警視庁捜査一課コールドケース捜査班に所属している。過去の未解決事件を調べ直す部署が新設され、同期の青木孝子と共に異動し勤務している。
尚美は、直接かかわっていないが「リカ事件」については、警視庁捜査一課では誰よりも知っている。過去十年の見舞いを続けているのは、事件のことを忘れないためでもある―。
ある日、山歩きを愛する男性が、敬馬山の中腹で道路下三メートルのところで白いスーツケースを見つけ、道路に引っ張り上げた。男性は不法投棄と思い一応中身を確認したところ、死体が入っていた。驚いて警察に通報したところから物語が始まる。
警察の調べによると、かねてから捜査していた被害者の遺体であることが判明したのだ。色めき立ったのは捜査一課の連中だ。早速捜査本部を立ち上げ、捜査が始まったが思うように進展しない。
尚美の二年先輩刑事奥山が、四日前から行方不明で、心配になった青木刑事は尚美を連れて奥山の自宅マンションに行った(奥山と青木は婚約している)そこで彼の死体を見つけたのだ。しかも身体が解体されている。首は切断され眼は刳り抜かれ鼻耳は削がれていた。手口から、リカの仕業だと判明し復讐を誓う。青木は尚美に『これはあたしの事件よ』『必ず仇を取ってやる』と息巻いた。
著者は、眼への執着が窺われるように思った。だから見えない相手が怖いと感じるのだろう。二人の女刑事の奮闘ぶりが面白い、相手は人間じゃない、怪物だ!と言いながら、揺動作戦にでる。女の執念の闘いだ!
リカの本質は、飽くなき女性の欲求を満たすこと。
狂人だが怪物ではないと思う。
尚美自身も、知らないうちにリカの魂が乗り移った様に感じる作品だった。
読書は楽しい。
- 感想投稿日 : 2021年8月28日
- 読了日 : 2021年8月28日
- 本棚登録日 : 2021年8月10日
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