Excelで学ぶ意思決定論

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  • オーム社 (2006年1月1日発売)
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 微妙。その一言に尽きる。まず、ミスが多い。例えば、カイ2乗検定のExcelのスクリーンショットでは合計値が間違っている。合計値が間違っているから期待値も間違っているし、当然カイ2乗値も間違っている。仮にも「Excelで学ぶ〜」というタイトルなのにSUM関数ひとつまともに使えないというのはまずい。

 また、同じく検定の所で離散確率分布を説明する際にコインを10回投げた時に表が出る確率が書かれているのだが、ここに0回表が出る確率が書かれていない。にも関わらず書かれている全ての確率を足すと1になると言っている。(10回投げて表が全くでない確率は0.000977だから1に極めて近いが、1ではない。)本書の性格上、学生レベルの初歩の確率すら正しく説明出来ていないのは、ケアレスミスにしてもひどい。

 本書は相関係数、検定、回帰分析、線形計画法、Decision Tree、ゲーム理論などの意思決定ツールを表面的でなくバックボーンから理解する為の本だという。しかしながら、その割には説明が弱い。

 例えば相関係数。相関係数は「共分散の各変数を標準化する事で変数の単位やスケールを打ち消して、純粋にデータの関連度合いを比較可能な形にする指標」である事はどれだけ平易な本でも大抵書かれている。でも、本書ではそもそも共分散の説明を抜きに相関係数の説明に入っている。従って相関係数の算出式を出された所で恐らく理解出来ないだろう。バックボーンから理解しましょうと言っている本の説明とは到底思えない。

 また、気になったのは本書ではやたらと「〜だそうです」、「〜みたいです」などの弱気な表現が多い。先に挙げた確率の間違いや、相関係数の説明の手際の悪さを読むと、この弱気な表現と相俟って「この著者、本当に理解して書いているのか?」と疑問にすら思う。やたらと著者が通ったビジネススクールの話をしている所からも、なんとなくこの著者が授業の際に取ったノートをそのまま見せられている気分にすらなる。

 そもそも意思決定の本を書く著者がこの薄さ(200ページちょっと)で相関係数、検定、回帰分析、線形計画法、Decision Tree、ゲーム理論などひとつひとつで本1冊書ける様なテーマをバックボーンから理解させる本が書けると「意思決定した」時点でこの本がダメな本だと物語っていると思う。これなら、もうバックボーンはばっさり割愛して、Excelを使って結果だけを求める本を同じページ数で書いてくれたほうが余程良い本になったのでは無いか。

 所々、面白い応用例などもあったけど先述した通りの著者の信用度ではそれすら微妙。この本を買うくらいなら目次を見て各章の興味のある分野の入門書を買った方が役に立つ。

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読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 読了
感想投稿日 : 2009年2月25日
本棚登録日 : 2009年2月25日

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