1.概要
「情報を如何に扱い、役立たせるか」という身近で不偏的な問題について
情報参謀の経歴を持つ筆者が、
米国参謀大学で教えられる作戦情報(オペレーション・インテリジェンス)の要を体系的に解説している。
書名に「ビジネスマンのため」という言葉が含まれているものの
本書の内容は、軍事戦略・軍事史の中での作戦情報理論が殆んどである。
とはいえ、本書で述べられる概念・技術要素は、
人類史上の戦争・軍事をもとに、蓄積・実践されてきたノウハウであり、
実社会で持てはやされているMBAの諸理論等へ多大な影響を与えている。
軍事というフィルターを通じて、「情報を如何に扱い、役立たせるか」
という問題について、俯瞰してみることのきっかけとなり、発見があった。
2.ポイント
2.1情報:インテリジェンス
将来時点に決断し、行動を起こすための判断材料
(インフォメーション→インテリジェンス)
2.2情報活動サイクル
情報の要求⇒情報資料の収集⇒情報資料の処理⇒情報の利用
情報を如何に合理的に目的にあうようにまとめ
正確に伝達し、有効に活用するか?がポイント
①情報の要求
ドクトリン・概況・方針を踏まえ、
⇒何を決断・判断するのか
⇒そのために必要な情報の定義
(相手の動き・時間軸・地域)
限られた時間・体制予算の中で知恵を使ってポイントを押さえ全体を掴む。
②情報資料の収集
文章・画像・実物等さまざまな分類方法を体系的に列挙している。
定点観測の有効性や量的解析が不可能な情報として
情報収集者が実際に現場で感じた「におい」「意思(団結・士気)」
要素の重要性も挙げている。
③情報資料の処理
受付⇒選別⇒評価修正⇒判定⇒情報
評価付け(信頼性・正確性)
④情報の使用
情報は情報を使う能力のある人に伝える。
階層別に、質量を調整すること、
事前のブリーフィングも重要
2.3その他
技術的な要素の重要性もさることながら
情報を活用する実世界に対する国際政治・歴史・心理等
総合的な認識の重要性を強調している。
情報活動自体も実世界の中にあることを認識しなければ
情報は有効に活用されない
3.感想
情報収集&行動という両輪のうちの、情報収集の部分に焦点を
当て体系的に俯瞰できた。
本書はいわゆるピラミッド構造の軍隊組織を前提としていて
ピンとこない部分もある。とはいえ、多くの要素が情報を収集し、活動する各種組織体等(企業・団体)に対しても個別要素はあてはめて
考えることで、再考するきっかけとなる。
実際に繰り広げられてきた国際政治・軍事でのエピソードから
情報を扱う現場の情報マンの息遣いを感じることで、現場の感覚に対する
情報を読み取り活かすための感性を新たに磨くきっかけとなる。
- 感想投稿日 : 2011年6月16日
- 読了日 : 2008年10月11日
- 本棚登録日 : 2011年6月14日
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