儚い羊たちの祝宴(新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2011年7月1日発売)
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本棚登録 : 1071
感想 : 84
5

面白かった!と単純に言っていいのかを迷ってしまうけれど、素晴らしい短編集でした。
時代背景や語り口、「バベルの会」とは…?
物語の中で、私が知らない著作が沢山でてきますが、それらの内容をすぐに想像できる方は更にぞくっと面白いのではないでしょうか。
私は古谷一行さんや石坂浩二さんが昔演じていた金田一シリーズの映像が浮かんできました。仄暗いおどろおどろしい雰囲気。

「身内に不幸がありまして」
一気にこの「儚い…」の世界に連れて行かれます。
ただまだ序章だったのだとあとから気付くのですが。
お嬢様と使用人という関係性を植え付けられた気もします。
泉鏡花の外科室など、沢山の作品が登場します。
途中で知らない作品をググってみると、更にその傾倒に、その世界に惹かれていく2人の共通している感性に、生涯良い友人でいられただろうに…と残念にも思います。
殺害動機は他人からみたらくだらないのかもしれないけれど、当事者には真剣な問題なんでしょうね。

「北の館の罪人」
童話、宮沢賢治の「名前のないレストラン」のような感じで読んでいました。「何かあるよね、何かあるよね」って。
絵画の材料など毎度のことながら米澤穂信さんの知識の豊富さに感心もしました。

「山荘秘聞」
管理人屋島守子。こういう生真面目な人っているよねーと思いながら読み進め、実は前の主人、前降家当主はそれの行き過ぎた危うさに気付いて解任したのでは…などと深読みしてしまいました。ひとりで人里離れた別荘で働いていたらどんどん融通は効かず、思い込みが強くなるばかりなんでしょうね…。

「玉野五十鈴の誉れ」
私はこの作品が一番印象的でした。
これほど最後の一行が…。
真実はわからないけど、タイトルにある「誉れ」。
玉野五十鈴が本当は本当は生きている意味を、純香と過ごした日々の楽しさをわかっていたら良いなと。

「儚い羊たちの祝宴」
「羊たち」の意味が判明する最終章。
ここにもまた厨娘という主人にある意味従順な使用人。
どうしてそこまで仕えることが出来るのだろうか。
語り手である「私」は誰なのだろう…という興味を残して終わる。

どの作品も読んでいる途中で想像していたものとは異なる結末。そうきたかーという感じです。
また米澤穂信さんの引き出しの多さに驚き、次に読む作品に期待せずにはいられません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 米澤穂信
感想投稿日 : 2023年11月5日
読了日 : 2023年11月4日
本棚登録日 : 2023年11月4日

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