銀花の蔵

著者 :
  • 新潮社 (2020年4月24日発売)
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歴史ある醤油蔵の床下から出てきた子どもの骨、座敷童か…「やっと会えたね」から始まる話は、50年前に遡る。
父が実家の醤油蔵を継ぐために戻った家で、座敷童の姿を見た銀花の人生を、昭和の出来事を交えながら描く。
一族にまつわる哀しく辛い過去、次々と起こる惨事。小学生の銀花は母の罪を背負い、どれほど辛く生きにくかっただろう。けれど銀花は醤油蔵を守りここで生きていく事を選択する。強い人だと思う。強く生きられて良かったと思う。
「かわいくてかわいそう」と父から言われていた母親の弱さを銀花は嫌った。「かわいそう」の中に嘲りや憐れみを感じるから。
しかし年齢を重ねた銀花が「かわいそうと言える父の強さが母と私を救った」という。母の過去を知ることで母を理解しようとする。
肯定する、救いはそこから生まれるのか。
人物描写が細やかで、親子、兄弟、嫁姑、各々の関係においての心情が伝わってくる。
家族、その親密で複雑、他人以上に強くなる愛と憎悪を、哀しみと共に感じた。
家を守るってどういうこと。家を守る神さまの座敷わらしって何なのだろうと考えてしまう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月2日
読了日 : 2020年6月28日
本棚登録日 : 2020年7月2日

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