冬雷

著者 :
  • 東京創元社 (2017年4月28日発売)
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本棚登録 : 370
感想 : 64
4

『圧倒的な筆力で人間の激情を描ききった濃密な長編ミステリー』と賞されていたが、
なるほど、ページをめくる手が止まらず読み終わった時は空が白み始めていた。

孤児の夏目代助が名家の跡継ぎとなり、鷹匠の責任を果たすため努力してきたのも「家族」を求め続けていたためだろう。
けれど義弟が生まれ歯車が狂いだした。
代助があまりに良い子だけに読んでいて辛い。

冬雷が鳴る日本海の暗さと閉塞感に包まれた村社会の中で、鷹匠の代助と巫女・真琴が執り行う神事が凛と張りつめて美しい。
ふたりが温めてきた愛情が切ない。

伝統やしきたりを守ることが、迷信を盲信し呪縛となり、歪みを生み出してしまう。美と醜、神聖と卑属が背中合わせにあるようで怖い。
抗えない自然災害への畏怖は、神事によって平安を保とうとする。だから因習は変えてはならないと頑なな村人たち。
村社会の中で生きる人々の激情に圧倒された。

ミステリーを読み慣れていない為か、え~!まさか!なんで?の連続でした。
ミステリーは寝不足になりますね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年2月8日
読了日 : 2021年2月8日
本棚登録日 : 2021年2月8日

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