水底の歌―柿本人麿論 (上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1983年3月1日発売)
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感想 : 14
3

万葉の歌人、柿本人麿が当時の権力者によって石見国で刑死(水死)させられたのではないか…という持論を丁寧に考察した本。

上巻では「柿本人麿の死」と題して、斎藤茂吉が人麿終焉の地とした湯抱を否定し、後半に「柿本人麿の生」と題して、賀茂真淵が唱えた下級官吏説否定している。

どうしてそのように考えたのかを丁寧に記している分、話がなかなか進まないように思うが、作者の思考をなぞって結論へ至る思考方法が楽しめると思えば、それなりに楽しく読めると思う。

持統天皇が則天武后と同じ時代の人であるとか、万葉集巻二で死を「自ら傷みて」作られたとされる歌は人麿と有間皇子のみであるとか、同じ人物が違う名前で記されることもあるとか、天孫降臨の神話を記した古事記の成立は人麿の時代よりも後であるとか、そう言えばそうだっけ!って目からウロコがぽろりの話が多々あって、客観的俯瞰的思考の大切さを感じました。

ま。
梅原さんが従来の通説を客観的に再考するように、この本を読む側も梅原説を客観的に自分の経験値を糧に俯瞰して読む必要があることは、言わずもがな…だけどね(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・伝記
感想投稿日 : 2016年2月23日
読了日 : 2016年2月23日
本棚登録日 : 2016年2月23日

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