アジャイル開発とスクラム: 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント

  • 翔泳社 (2013年1月1日発売)
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感想 : 78

読みながら「野中氏と平鍋氏が書いてるんだからバイブルとなって欲しいけど、後半、事例やインタビューなので、これを読んでスクラムを実践するのは難しいかも…」と思っていた。だがしかし、"おわりに" を読んで、"やっぱりバイブルだ!" と思った。

一部を引用する。時は 2011 年。ベネフィールド氏 (ガブリエル・ベネフィールド) が講師を務めるスクラムトレーニングに、野中氏と平鍋氏が飛び入り参加している。そこに参加者からの質問があった (文中の "私" は平鍋氏)。

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「プロジェクトには、営業部門、マーケティング部門、サポート部門など、いくつかの部門にステークホルダーがいるのです。そして、どの機能を優先すべきかについて意見が分かれているのです。意見を一つにまとめるには、どうしたらよいのでしょうか」

この場にいた私は、「持ち点による投票をする」という答えなどを考えていた。この質問に対して、ガブリエルが突然、振り返って聞いた。

「野中先生は、どう思われますか」
急な質問だったので野中郁次郎先生は一瞬戸惑ったが、その後少し間を置いておっしゃった。

「合宿をしない」

そして、こう続けた。

「形式的な会議で決めることはできない。いろんな背景をもった人の集合において、形式知で語れること、理解し合えることはごく一部だ。(続きは本書で)」
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スクラムの根底に流れる本質が垣間見える一言だと私は思った。

これはスクラムというより SECI モデルの話に分類されるのだが、どちらも野中先生に端を発するし、スクラムは SECI モデルを内包する軽量フレームワークだし…というノーガキはどーでもいいか…。(^^;

野中氏、平鍋氏の綴った本書からは、形式知であるスクラムを支える暗黙知の香りが漂う。イノベーションを目指すすべての人へ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ICT
感想投稿日 : 2013年7月12日
読了日 : 2013年7月12日
本棚登録日 : 2013年7月12日

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