「文学がようやく阿部和重に追いついた」という帯のコピーは明らかに誇張だと思います。
しかし、全体的に「普通に面白かった」作品です。「普通に面白かった」という表現への考察はこの際置いといていただきたい。逆に、そうとしか表現できないくらい、読後感として何も残っていない、でもそこそこ面白かったことは覚えている、という作品です。
物語の主題であるロリータコンプレックスへの現代病的アプローチや、タイトルに込められた隠喩的なものは面白く、主人公の心理描写も、なかなか危ういところで語り手としての均衡を保っています。また、随所に主人公を否定するキャラクタを出すことで、その異常性を際だたせてもいます。
それなりに練られたキャラクタと構成なのに……やはり「薄っぺらい」物語と思ってしまいました。
恐らく、後半途中からのラストへ向かっていく部分が、それまでの重層的な展開に比べると若干陳腐に見えてしまうからかもしれません。3分の2までは良かったのに、と思うと残念です。
でも、あまり気にしなければさらっと読める作品ですので、オススメはできます、はい。
(2006年読了)
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- 感想投稿日 : 2011年8月27日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年8月27日
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