日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」

著者 :
  • 集英社 (2011年11月25日発売)
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本棚登録 : 525
感想 : 96
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フィリピンでの「困窮邦人」に関するドキュメンタリー。
開高健ノンフィクション賞を受賞しているだけあって、一気に読ませる、
素晴らしい本でした。

様々な理由から日本を捨てて、フィリピンに移り住み、そこでホームレスや拘留者や寝たきりになってしまった日本人たち。
それぞれのバックグランドから経緯、現在までを丹念に追っていて、非常に迫力とリアリズムが溢れるドキュメンタリーになっています。

日本を捨てて、フィリピンに渡った理由は、それぞれ異なっており、ある人はフィリピンパブの女性を追っかけていった場合もあれば、偽装結婚にだまされた人、日本での借金から逃げ出した人、大金を持って渡りながら結局、文無しになってしまった人、きっかけは様々です。

キリスト教が広まっており、困っている人は助ける、というフィリピンの国民性もあるようですが、それに甘えながら困窮していく日本人、人との繋がりが無くなっている日本に捨てられた日本人、一度そうなった人を二度と受け入れない在日の日本人、様々な姿が丁寧な取材で丹念に浮かび上がってきます。

様々な想いから、つい、一気に読み上げてしまいました。この作品は、表現は悪いですが、面白いです。

一方で、この作品にのめり込むj、私自身の気持ちにも考えさせられるところがありました(作者も最後に書いていますが・・・)。

困窮しどうしようもない状況になった彼らに対する憐憫の情なのか、だからこういう奴等はダメなんだという批判の気持ちなのか、こんな風にはなりたくないなという醒めた気持ちなのか、困窮した彼らを知って現在の自分に優越感を感じているのか、繋がりが無くなった日本という国への批判の気持ちなのか・・・
読み進める中で、正直、様々な自分の気持ちがありました。

自分の中での結論はありませんが、この様に色々と考えさせられる作品こそ、おそらく優れたドキュメンタリーなのだと言えるのだと思います。

是非、ご一読を。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年12月12日
読了日 : 2012年12月9日
本棚登録日 : 2012年1月7日

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