銀河の運送屋、という職業は他にあったと記憶しているが、確かに郵便屋というのはなかったかもしれない。
いや、厳密に言うと、ノートンの『太陽の女王号』シリーズ未訳の中編は、主人公たちが郵便船業務を請け負うというものなのだが、まあこれは、本業じゃあないからねえ。
しかし、本作のキモはそこではなくて、人間(男)、セクサロイド(男だけど女にもなる)、船の人工知能(女)の三角関係にあると言える。
主人公のイルは、ノーマルの男なのだが、超絶美貌の相棒、セクサロイドのクラムジーにだんだんと惹かれていってしまう。
一方、何もかも完璧っ、にみえるクラムジーは色々とトラウマなどを抱えているし、実のところイルにぞっこん、らしい。
ところがイルは、自分がクラムジーのような存在に惚れられるほどの男だなどという自信はこれっぽっちもないうえ、ノーマルなのに男であるクラムジーに惹かれている。女であるクラムジーにもくらくらするけど、どうも恋している相手は「男の」クラムジーらしい、と気付いてうだうだするというのが物語の勘所。
勿論、SF的な仕掛けはそこかしこにあるし、センス・オブ・ワンダーにも溢れているけれど、まあ、銀河をまたにかけた壮大な三角関係の物語、だと思うのだ。
このクラムジー、普段は常に男の姿で、精神的ショックを受けたりするといきなり女になってしまうという癖がある。作者はあとがきで、トランスジェンダーにとても惹かれてきた、と述べているが、どうもクラムジーの言動を見ていると、女になっちゃう事がある男(女性的な部分のある男)というより、むしろ、普段は男のようにふるまっている男まさりの女に近いのではないかという気がする。強いし美しいし、アンドロイドだから当然知識量なども凄いのだけど、実はとてもいじらしいのだ。生活能力はないけど、クラムジーは尽くすタイプなんですね。そこが魅力的。
- 感想投稿日 : 2017年2月15日
- 読了日 : 2017年2月10日
- 本棚登録日 : 2017年2月8日
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