ふと思いだす。
わたしの愛する本たちから――わたしの書いた物語からすらも――ひそかに匂う、どこまでも静かで、どこまでも安らかなもの。
これは『死』だ。
現実をおそれ、夢をみたいとねがうこと。わたしにとってほんのささやかな希望であるそれすらも、『死』という深淵を覗きこんでいるということには他ならない。むしろ、その『死』の放つ香りに魅せられているのかもしれない。
だがわたしたちの求めているものは、もっと先だ。もっと先にあるものだ。『死』の安らぎを受け入れたからこそ、見つめることができるもの。
そう、今、世界は眠りたがっている。それでも。それでも人は――
この本のきらめきを、わたしはまだ言葉にはできない。アイデス<iDEATH>の意味するものを、はっきりとした輪郭でとらえることができない。
でもわたしはこう言うことはできる。今こそ声高らかに叫ぼう。「それでも人は美しい」と。
なぜそう言えるのかはわからない。理由を答えるには、わたしはまだ多くのことを知らない。
でも、だからこそわたしはずっと自分自身に問い続けていくのだと思う。きっとそれが『生きる』ということだ。きっと。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
novel
- 感想投稿日 : 2010年3月31日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2010年3月31日
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コメント 1件
猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/01/15