西瓜糖の日々 (河出文庫 フ 5-1)

  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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本棚登録 : 2213
感想 : 211
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ふと思いだす。
わたしの愛する本たちから――わたしの書いた物語からすらも――ひそかに匂う、どこまでも静かで、どこまでも安らかなもの。
これは『死』だ。

現実をおそれ、夢をみたいとねがうこと。わたしにとってほんのささやかな希望であるそれすらも、『死』という深淵を覗きこんでいるということには他ならない。むしろ、その『死』の放つ香りに魅せられているのかもしれない。
だがわたしたちの求めているものは、もっと先だ。もっと先にあるものだ。『死』の安らぎを受け入れたからこそ、見つめることができるもの。
そう、今、世界は眠りたがっている。それでも。それでも人は――

この本のきらめきを、わたしはまだ言葉にはできない。アイデス<iDEATH>の意味するものを、はっきりとした輪郭でとらえることができない。
でもわたしはこう言うことはできる。今こそ声高らかに叫ぼう。「それでも人は美しい」と。

なぜそう言えるのかはわからない。理由を答えるには、わたしはまだ多くのことを知らない。
でも、だからこそわたしはずっと自分自身に問い続けていくのだと思う。きっとそれが『生きる』ということだ。きっと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: novel
感想投稿日 : 2010年3月31日
読了日 : -
本棚登録日 : 2010年3月31日

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コメント 1件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/01/15

「「それでも人は美しい」と。」
淡々とした文章で人を愛し表現した作家ですね。日本では、もっと受け入れられそうなのに、、、

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