現代日本を読む―ノンフィクションの名作・問題作 (中公新書 2609)

著者 :
  • 中央公論新社 (2020年9月18日発売)
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ノンフィクションはフィクションの否定、フィクションはフェイクとほぼ同義、フェイクの反対語はトゥルースだから、ノンフィクション=真実、っていうような簡単な話にならないのがノンフィクションというジャンルです。だって本書でも取り上げられる「日本人とユダヤ人」の作者イザヤ・ベンダサンだって虚構なのだから。そいうえば、本書においてノンフィクションというジャンルを日本に定着させたとされている大宅壮一ノンフィクション賞の大宅壮一でさえ、岡本喜八の映画「日本の一番長い日」の原作者とされていたけど、最近の文庫では実質の原作者、半藤一利にクレジットが変えられているという話を聞いたばかりです。まえがきで引用される本田勝一の「日本語の作文技術」においてのテーゼ、『「事実的な文章」と「文学的な文章」にすべての文章表現は収まり、両者の配合度合いでその性格を位置づけられる』のだとしたら、ノンフィクションは作者の文学的エモーションに駆動される事実ベースの物語ということで、その真ん中に位置するのでしょうか?事実が事実として共有できない今日こそ、ノンフィクションという作者の視点の入った取材をベーストしたジャンルのトリセツを各々が持つことは、とても大切なコンピテンシーになると思います。そういう意味で、作者不詳、フィクションとノンフィクションの間、フィクションとジェンダー、アカデミック・ジャーナリズム、虚構と現実を越えた評価軸、写真とノンフィクション、科学ノンフィクション、日記とノンフィクションという章立ては刺激的でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年12月27日
読了日 : 2020年12月22日
本棚登録日 : 2020年11月30日

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