春日太一は凄い仕事を成し遂げたと思いました!この本の存在は東映というクレイジーな会社の過去を刻んだ墓碑銘なのではなく日本の映画産業の明日を見つめる礎。現に平成ライダーシリーズは東映時代劇のDNAを受け継いでいることは平山亨「泣き虫プロデューサーの遺言状」にも書かれている通り。また新たにライダー群像劇は東映群像時代劇の伏流水の氾濫なのではないかとも感じました。そもそも東映という会社の歴史が濃すぎる男たちの濃すぎる群像劇なのでした。「大衆」という言葉を誰よりも自分事化したベンチャー企業が大躍進し、しかしメジャーになっても無菌化せず「大衆」の欲望を寄り添おうとする姿勢。それは東映京都というスタジオに集う「あかんやつら」が「大衆」そのものだったから。東映京都からは松竹ヌーベルバーグも東宝モダニズムも生まれることありえないのです。そこにあるのは日本人の泥臭い匂い。しかし「大衆」が「生活者」というように滅菌されていく中で「あかんやつら」も居場所を失っていくのでした。しかし日本人が日本人である限り「あかん」成分は必要だと思うのです。この本の登場人物を愛おしく感じる感性が21世紀の「あかんやつら」に繋がれば、と願います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2017年2月13日
- 読了日 : 2017年2月12日
- 本棚登録日 : 2014年1月13日
みんなの感想をみる