昭和こども図書館

著者 :
  • 大空出版 (2017年7月27日発売)
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本棚登録 : 62
感想 : 8
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年齢は違いますが、自分の記憶の地下水脈を意識させる本です。学級文庫という大河は、滔々と、脈脈と流れているものなのですね。ピックアップされる本も時代を超えた超名作や、子供文化のなかでもマニアックな本とさまざまなですが、そのすべてが「あるある」ならぬ「あったあった」気分を蘇らせます。立花隆に「ぼくはこんな本を読んできた」という本がありますが、知の巨人でない普通の人々にも「ぼくはこんな本を読んできた」はあるのだ、と当たり前のことを改めて感じ入りました。オカルトやUFOに混じって、作者の感情移入が激しいのがミルンの「クマのプーさん」。訳者の石井桃子への評価も含めて奇跡とか魔術とか持ち出して『語り得ぬ圧倒的な「幸福感」』とひれ伏しています。そのポイントが「幼年期の終わりの文章化」です。考えてみれば、この本そのものの出発点も「幼年期の読書の顕在化」だったりして、作者の大切にしていることのピュアさが伝わってきます。一貫した、ひょうきんな語り口の裏は熱いものだと思います。もう一点、熱いポイントは「戦後民主主義」が生み出した「戦後民主主義教育のための子供向けの本」への拒否感。斉藤隆介「ベロ出しチョンマ」を拒絶する項など、自分が先生の気にいるような読書感想文を書いたことを思い出し、考えさせられました。戦中派の親世代が無理矢理渡そうとしたバトン、たぶん誰も持ってないのかもしれませんね…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年4月10日
読了日 : 2022年4月10日
本棚登録日 : 2017年12月28日

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