子供のための物語であるから、子供の時に読みたかった。子供の時にはきっと、ずっと共感できただろうと思うから。しかしこれは大人にとっても、救いの物語だった。とてもよかった。
この物語の、なにが、こんなにも心に残るのだろうと考えると、やはりアンナの心をきりとって文字にもってくる、感性だと思う。
こどもの心は混沌だ(混沌だったと思う)。うれしさ、悲しさ、悔しさ、希望、どれも鮮明すぎて、ありのままとらえることはとっても難しい(と思う)。しかし小説の中でアンナの気持ちを、いっときも作者は見失わない。アンナ、ひとりぼっちで繊細な、孤児の少女は、鮮明に存在し続ける。
マーニーのせかいとアンナのせかいが異なることはすぐにわかるけれど、だいじなところは、そこではないのだ。アンナがはじめてともだちになるマーニー。いきいきとアンナのまえに存在する魅力的なともだち。ともだちとすごす時間はなんて楽しくてみじかいんだろう。友情は、まるで魔法のように自信をもたらしてくれる。
そして、たとえば赤毛のアンを読んだ子供たちが成長してからはアンではなくマリラ・カスバートの気持ちに共感するように(しないか?)、わたしが共感するのは「おばちゃん(なんて善良なひとだろう)」であったりするわけでした。やっぱり子供の時に読みたかった。
最後に明かされた事実にはきっと願いが込められているのだろうと想像する。金持ちの娘だが愛情を与えられずに育った孤独なマーニーは、産んだ娘を愛せないままこの世を去る。うまれた娘は母の愛を知らないまま、その娘を残して世を去る。そして、ひとりきり残されたマーニーの孫はやはり、捨てられた子供として人生のスタートを切るが…、
悲しいことの連鎖がきれいに輪になって解かれるラストはとてもうつくしい。奇跡である。
- 感想投稿日 : 2014年5月29日
- 読了日 : 2014年5月29日
- 本棚登録日 : 2014年5月29日
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