勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫 ち 9-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年3月10日発売)
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勉強することは、自己破壊である。これまでのノリ;コードから自由になる。
勉強することは、獲得することではなく、喪失することだ。昔の自分でなくなる。
そして、勉強することで、「来るべきバカ」になるのだという。
著者は、へそ曲がりなのだろう。「来るべき賢者」というのが恥ずかしいのだろう。
まぁ。あとがきに、バカには、特異性という意味が残響していると言っているのは、照れ隠しか。
よく私は、「あーぁ。今日も勉弱した。なかなか勉強できない」などと言っていた。
著者が言うように「変身するような勉強」と言った意味で勉強はしていない。変身も自己破壊も起きていない。そんなに簡単には、変われないのだ。
「勉強によって自由になるとは、キモい人になることである」と言う。
要するにノリが悪くなるのだ。ノリが悪くなって、さらに突き進んでいく。
情報刺激が多い現代、わかりやすく、質がいい情報がたくさんあり、基本は本にあるというのは納得だ。インターネット上では、やはりフェイクも多いし、軽い情報も多い。
その中で、勉強を有限化することが大切だという。深追いのしすぎと目移りの誘惑に負ける。
環境概念は、「ある範囲において、他者との関係に入った状態」
環境に依存して生きており、こうするもんだという暗黙の了承がある。
環境には、目標があり、目的地と共同的な方向性がある。
他者とは、自分自身でないもの全てであり、生とは、他者に関わることだという。
そして、自分とは、他者によって構築されたものである。
言葉は、使われて初めて意味を持ち、辞典とは人々が言葉をどう使ってきたかの歴史書。
言語を通して、私たちは他者に乗っ取られている。言葉偏重の人という言葉があり、納得した。
言語は、人間のリモコンであり、言語と現実を結びつけて、思考し行動する。
道具的な言語の使い方と、玩具的言語の使い方がある。玩具的で自己目的な言葉の使い方に習熟する。言語は、架空の世界を作ることができる。例えば、りんごはクジラだ。
例として、不倫は悪い。から、良い不倫があるという論議を積み重ねること自体、「不倫」という言葉自体が、もう悪いのだから、無理があるなぁ。昔は不倫と言わず、浮気と言ったり、芸人や歌舞伎の世界みたいに、芸の肥やしと言っちゃったりするわけで、閉じられた言葉の空間で論議しているのがちょっとこの男は、切ないなぁ。

ツッコミとは、ちゃぶ台返し。ボケとは、論点ずらし。
それをツッコミ=アイロニー。ボケ=ユーモアという風に置き換えるけど、だいぶちゃうだろうと思う。やはり、状況というか環境が違いすぎる。論理的に論理飛躍させる。ちょっと無理やり感があって、なんとなく、若いなぁと感じてしまう。なんか、自分の行きたいところに、無理やり行かせようとする。結局「我田引水」哲学の類なのだろうか。ツッコミとアイロニーを一緒にすることで、最初からアイロニーを論じたかったのだというあざとささえも見せる。
アイロニーは根拠を疑うこと。ユーモアは見方を変えることだという。
ツッコミは根拠を疑うこと、ボケは見方を変えることと言い換えると随分と違和感があるなぁ。
著者は「ユーモアの過剰とは、コード変換による脱コード化である。この帰結は、意味飽和と呼ぶ。
意味飽和は、あらゆる言葉が無意味になる。ユーモアの極限は、意味飽和のナンセンスである。」という。もう言っていることが、よくわからない。アタマが飽和状態で受け入れられない。
どうも著者は、空気が読めず、知識をひけらかすことで、嫌われるタイプなので、それを反転させようと努力しているようだ。無駄なあがきだ。とにかく、これまでの要約してきたことが、「原理論」らしい。

言語偏重になり、自分の享楽を活用し、有限性を意識する勉強。
本を読んでも、完璧に読むことはできない。一字一字全て読んでいるかは確かではないし、通読しても覚えていない。読書とは、不完全なものである。読書において本質的なのは、本の位置付けをすることです。自分に引きつけて理解しようとしないことも大切。というが、自分に引き寄せなければ、面白くない。自分の感覚を拡張するとか。難しい本を読もうとするのは、無理に納得しようとするからであるというのは、賛成。わからなければ、飛ばしてもいい。いつかわかる時が来るかもしれない。
現状把握をメタ認識で行う。大きな構造的問題の中にある。
著者の興味があったのが「多様性、複数性、マイナー性」にあったという。どう時代と欲望論的に結びつけるかというのも必要だ。享楽的こだわりが、自分らしさを発揮できる。
難しかったけど、最後まで読めたというのは、著者がえらいのかもしれない。
何れにしても、人間は死ぬまで勉強するわけだから、常に勉強だね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思想/宗教
感想投稿日 : 2021年5月12日
読了日 : 2021年5月12日
本棚登録日 : 2021年5月12日

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