取材・執筆・推敲――書く人の教科書

著者 :
  • ダイヤモンド社 (2021年4月6日発売)
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本棚登録 : 257
感想 : 29
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 私は、かなり早くからブログを書き始めた。上海にいるときに楽天で「面白すぎるぜ 中国で農業」と言うタイトルで書いた。それが、ライブドアで「大きな国で」「うろたえる紙魚は泳ぐ」「雑草の都合」などいくつものブログを書いていた。仕事においても、まとめた報告をいくつも書いた。本やプライムビデオをアマゾンレビューに書き、書いたレビューは4000を超えた。頭で考えていることと文章を書くスピードがずれていて、スッキリかくと言うのがなかなかできなかった。それでも、私は、駄文を書くのは好きなのだ。
 それで、先月から、農業技術通信社の月刊誌「農業経営者」の提携ライターとなった。先週第1弾をかなり苦しんで書き上げた。農業経営者の人間臭さとぶざまさを描きたいと思い書いた。また、読んで感銘を受けた「ブランド米開発競争」の著者熊野孝文氏へインタビューもした。
 提携ライターって、意外と大変だと思っていたら、古賀史健による「取材・執筆・推敲」と言う本が、2021年4月7日に発行された。実に480ページもある大作だった。なんか、私がライターになるために書いてくれたような本である。書かれている内容は、「プロのライターになるための教科書」である。古賀史健って、全く知らないと思っていたら、「嫌われる勇気」のライターだった。その本の心憎いほどの編集構成に驚いた。あぁ。こんな本をかけるんだと思った。「トラウマとは 言い訳にしかすぎない」と言う指摘に目からウロコで、嫌われると言う意味を解明した著者だ。編著書累計93冊、発行総計部数1100万部超。と言う怪物ライターでもある。
 ライターとは何か?の定義から始まる。著者は言う「ライターとは、コンテンツを作る人である。雑文家である。そして、からっぽの存在であり、だから取材する。取材して、取材した人の想いを伝える人である。」と定義する。なるほど、今回農業経営者に書いた宮崎のひなたいちご園社長へのレポは、そう書いたなぁ。とりあえず、本筋は間違っていなかった。コンテンツは「ここでしか読めない何かが含まれたときに、初めて本質的な価値を手にする。」と言う。ライターは、一冊の本を読むように、人を読み、世界を読む。ライターはなによりも読む人なのだ。
 さて、インタビュアーとは、聞く人であるが聞くにはHear,Listen,Askがあり、訊くと言うAskが大切。質問する力を磨く。そこから、情報の希少性が生まれる。ありきたりの情報を聞いただけでは、インタビューは成り立たない。その人が言いそうなことから、仮説を立てて、本音を聞き出す。
 知らなかった言うことを引き出すことだ。
古賀史健は「ぼくにとっての取材とは、対象を『知る』ところから出発して、『わかる』にたどり着くまでの知的冒険だ」と言う。
 倫理的な正しさと論理的な正しさは違う。説得と納得も違う。説得はされるもので、納得はするものである。読者を説得にかかり、読者を論破してしまってはいけない。ふーむ。そうだ!
 会話の中では、意味よりも感情を伝えることが大切。
「ぼくは、いつも翻案に踏み込み、創作にまで踏み込んでいく。」
そして、何を書くかではなく、何を書かないかを考える。
「構造の頑強性、情報の希少性、話題の鏡面性」を追求する。
 桃太郎の童話の画面の選び方、話の構成は百貨店のようであるべきと言うのは、面白い。
とりわけ、推敲についてのやり方については、非常に参考になった。推敲するのが難しいのは、自分の文章であることだと言うのが、納得。縦書きを横書きにしたり、フォントを変えたりしてチェックする。まさに、プロのライターになるための教科書としてよくねられている。
 古賀史健のライターとしての「秘伝のたれ」が、緻密に具体的書かれていて、これを読んだら、私はプロのライターになっていると錯覚させるほどの本だった。いいねぇ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読書術/編集術
感想投稿日 : 2022年2月12日
読了日 : 2022年2月12日
本棚登録日 : 2022年2月12日

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