十鬼の絆(通常版) - PSP

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感想 : 13
3

【あらすじ】
「鬼」には鬼のコミュニティがあり、「人」とは関わらず生きていく。
…それが、十家の鬼の頭領からなる「十鬼衆」での”掟”だった。
八瀬姫は十鬼衆を集め、「人と密接に接している鬼がいるなら、即刻縁を切るように」と伝えるため会合を開くが、その会合期間中に姫は何者かに襲われ昏睡状態になってしまう。

時代は戦国時代、関ヶ原の戦い直前。
十鬼衆はそれぞれが接している人間を守るため、人の世の戦いに身を投じることになる。


【主人公】
義務感と正義感に燃えた主人公で、一般的なオトメイト主人公よりも強く、戦える設定で有能。
それでも”主役”である主人公の”お飾り”感が否めないのは、彼女が攻略対象に対して【影響を及ぼす力がない】から。

主人公の存在意義って、何も「戦えること」が条件な訳ではないです。戦えなくても彼らを支え、変え、一緒に困難を乗り越えることはできます。

…が、今作の攻略対象はどいつも勝手に突っ走る上に、主人公はそれを止める術がなく(上手くかわされるか説得させられる)勝手に追っかけて共闘…というパターンばかり。
「これ主人公はいてもいなくても結果同じ…?」と思ってしまう。

嫌いな主人公、という訳ではないですが、
責務、掟、とさんざん攻略対象に迫る割にあっさり説得されてたりするし(笑)第三者のような扱いをされているので今一つ、魅力に欠ける。


【攻略対象】
キャラデザと設定こそ魅力的ですが、ややブレを感じます。

言っていることと実際の行動が異なっていたり、作中で散々強調される”鬼の掟”を欠片も重視していなかったり。(仮にも「当主」という立場にありながらフリーダムというか。)
一本筋が通っておらず、あっちフラフラ、こっちフラフラ…な印象が強く、恋愛対象として今一つ魅力的に映りません。

また、描写不足なところが多い気もします。
「薄桜鬼」も同様に描写不足な部分が多いのですが、こちらは歴史に名を残す「もともと知名度・人気ともにある既存のキャラクター」を使用しているので、ゲームで深く掘り下げなくてもある程度はユーザーが勝手に脳内補完してくれます。
反面「十鬼」の攻略対象は全員「オリジナルキャラ」なので、彼らをしっかりと描写しないと「ただの顔がいい男」になっちゃう…、し、現実に「なってしまっている」のが惜しい。


【システム/形式】
ノベル形式。
特記すべきは、「縮地」機能と、パラメータ(好感度や、その他数値など)を調整して好きなところからプレイを開始できる機能。
縮地機能に関しては、既読パートをごっそりと飛ばせるので周回がお手軽に。
後者については複数エンディングの回収に重宝します。
かなり便利。


【ストーリー】
<<主軸>>
鬼の社会がある、鬼の特殊能力がある、鬼の社会には人の世とは違う掟がある、といった【魅力的な要素】は持っているのに、今一つ鬼社会がフューチャ―されていないというか、設定倒れ感がプンプンします。
「十鬼の絆」というタイトルや、上記のような鬼社会の設定から”鬼同士の絆”の話かと思いきや、それらは希薄。
絆があるのは人間と鬼。
葛藤も何もなく、鬼の頭領たちは寸分も迷うことなく鬼同士の絆よりも人との絆を選びとります。

いまひとつ作り手が何を伝えたかったのが不鮮明で、【何がしたかったんだよ】というツッコミを禁じえない。
金太郎飴だとか、そういう訳ではないのですが、無駄な設定が多い上に書きたい内容がブレまくりで、風呂敷を広げたはいいけど回収しきれずぐっちゃぐちゃのまま終わっているというか…。

また、歴史要素も中途半端です。
ユーザーが求めている”歴史要素”って、ストーリーを通して歴史の大まかな「流れ」を知ることができること、そしてお気に入りのキャラを通して史実の人物の「意外の裏の顔」を知ること、だと思うのです。
…断じてイケメンが出てくる歴史解説書を求めているのではない…。

<<恋愛要素>>
同じ監督が似せて作った作品なだけあり、「薄桜鬼」とよく似ています。
どちらかといえば、キャラとの恋愛を楽しむ作品、というよりも、キャラのカッコよさにキャーキャー言う作品なので、恋愛要素自体が薄いです。

女性キャラがほぼ出てこないのでギリギリ特別感は感じますが、なんとなく成り行きで行動を共にしているだけで、別に彼に望まれてついてきた訳でも主人公が本当に彼に惚れこんでついてきた訳でもないので(笑)思い・思われているのか、と言われると頭をかしげずにはいられません。

どいつもこいつも色恋よりも戦!な子なので、そもそも恋愛をしている感が…はっきりいって、ない。
当然ながら、過程なんてありはしません。

ルート分岐で彼を追っかけることになって(なりゆき)、一緒に行動していたらいつの間にかエンディング…状態。


【感想】
別に買って損だった、とは思いませんが、特段「買ってよかった!」とは思わないなぁ…。

絵の綺麗さやシステム面での工夫は大きく評価できます。
…が、中身がお粗末、というか、設定が勿体ない。

ストーリーは風呂敷を広げただけで回収できていない、ネタは「薄桜鬼」の二番煎じ、ではキャラ萌え…もキャラ描写が中途半端、で正直、製作者側がこの作品をどういう方向でウリたかったのかさっぱり見当がつきません。
おそらく「薄桜鬼」のような、かっこいい男を提示してそれに喰いついてもらいたかったんでしょうが…、
今は乙女ゲームも数が豊富ですし、イケメンが出てくる漫画・アニメも少なくないので、これじゃあハッキリ言って、微妙です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 乙女ゲーム
感想投稿日 : 2014年5月23日
読了日 : 2012年8月12日
本棚登録日 : 2012年5月18日

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