ここまで真正面から「日本語」への愛着と危機感を顕にした著作を、寡聞にして僕は知らない。
そしてその愛着と危機感は、著者が日本語と英語のバイリンガルでありつつ、日本語で小説をものすという、これまでの日本の「文学」界においては特殊な事情に起因している。
筆者の日本語への愛着はとても深い。
だからこそ、副題にもあるように「英語の世紀の中で」日本語が日本語としてその命脈を保つことができるのかという危機感も切実だ。
河合隼雄氏や坂口安吾でさえ「日本語や日本文化は亡びない」と信じているのだから、とうぜん僕自身も日本語や日本文化が今後も輝き続けることを信じている。
しかし、それが極めて楽観的な盲信でしかないことを、著者は非常に丁寧に、そして論理的に解き明かしてくれる。
日本語を愛し、日本文化を愛する一員として、
そして国語教育に携わるものとして、
「言葉」の問題を真摯に考えたい。
そう思わせてくる本だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
評論
- 感想投稿日 : 2013年5月5日
- 読了日 : 2013年5月5日
- 本棚登録日 : 2013年5月5日
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