俺の妹がこんなに可愛いわけがない(12) (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2013年6月7日発売)
3.75
  • (83)
  • (72)
  • (92)
  • (21)
  • (6)
本棚登録 : 1025
感想 : 98
3

まずは、12巻という長きに渡り続けてきたこのシリーズをしっかり完結させた伏見先生に「お疲れ様」と「ありがとう」を言いたい。
これだけの人気作、書き続けることは大変だったでしょう。実際色々あったようだし。
そんな中、なかなか思うとおり完結できない作品も多い中、見事終わらせたことはほんとすごいと思う。
作者とイラストレーターと編集者に拍手。

さて…賛否両論のこの最終巻。
私はこれまでの京介と桐乃の関係が好きでした。
具体的には、軽口を言い合いながらも信頼していて、素直になれないながらも困ったときにはお互いのことを思って助け合える、そんな関係。
先日アニメで放映された、黒猫に振られて落ち込んでいる京介を引っ張る桐乃や、撮影がおしてイベントに間に合わない桐乃を自転車で迎えに行く京介なんてまさにその象徴。
心温まるエピソードだし、そんな二人の関係が好きだった。
そしてその根底にあるのは血の繋がった兄妹の絆なんだよね。
だからこそ今まで安心してみていられた。
京介が桐乃のことを好きだ好きだと言うのも妹として好きだと解釈していたし、京介が他の女の子と仲良くしていると不機嫌になる桐乃もお兄ちゃんっ子の延長だと思っていた。
そのため、今回の結末も京介は桐乃のために誰ともくっつかないエンドを予想していたし、希望もしていた。

結果はご存知のとおり。
京介と桐乃が出した答えは「期間限定の恋人になる」ということだった。
自分たちの想いやその行為に対する周囲への影響など、色んなことを考えた結果の妥協点なのであろう。
しかし 、期間限定とはいえ、恋人関係である。
二人の「好き」は兄妹としての「好き」ではなく、いつのまにやら異性としての「好き」になっていた。
特に読者には、最初期間限定と言うことがわからなかっただけに、率直な感想は「気持ち悪い」の一言。だけど。
ただ、京介も桐乃も馬鹿じゃない。周りからどう見られるか、特に親がどう思うかなんてことは散々悩んだんだろう。
常識的に考えて駄目なのは分かっている。麻奈美にも釘を刺されている。
それでも止まれなかったのを若さ故の過ちと言ってしまうのは簡単だけど、そこまで好きになれる相手がいるというのは、正直ちょっと羨ましくもある。
ようやく素直になれて、相手も同じ気持ちでいてくれて。そのことが分かって。
終わりがあるからこそ思い切ることができた。
その時間、二人は本当に幸せだったんだろうな。
理解はできないけど、この二人なら・・・と納得はしてしまう。

ただし、読み手が覗ける物語はここで終わったが、京介と桐乃の人生は続いていく。
それを考えると少し不安にもなる。
魔法の時間が過ぎて、二人はきっぱり割り切ることができるのだろうか。
一度知ってしまった幸せな時間を、再び味わいたいと思わなくはないのだろうか。
まして手を伸ばせば触れられる距離にいるのだ。
あれだけ好きあっていて、さらに良くも悪くも行動力もある二人のこと。
このまますんなりもとの兄妹に戻るとは到底思えない。
実際、早速京介は桐乃にキスをしている。
「兄妹なんだから別にいいだろ」と言っているが、普通の兄妹はそんなことしないよ、京介。
京介だって桐乃と付き合う前に問われたら、「妹とキスなんて有り得ない」と答えていたはず。
既に常識という名の枷は外れてしまっている。
再び付き合うという形にはならないにしろ、「兄妹なんだから別にいいだろ」という言葉を免罪符に、堕ちるところまで堕ちちゃうんじゃないかなぁ…。
そうなる前に、お互いによりよい人と出会うことを願うばかりである。


以下、作品を盛り上げてくれたサブキャラたちについて簡単に。
・ 黒猫…京介と桐乃を焚きつけてすらいる、ある意味厄介な人。この子がもう少しわがままだったら、多くの人が納得のいく結末に落ち着いてたんだろうに。
・ 沙織…唯一の良心。京介に惚れなかったことが個人的に高ポイント。その分徐々に物語からフェードアウトしていったのが残念。
・ あやせ…可愛くていいキャラだったんだけどさ、ラスト近辺の扱いがちょっと…。物語の都合上、盛り上げる都合上いい様に使われてしまったなという印象。
・ 加奈子…こいつまで参戦させる必要はなかったんじゃないか。告白はかっこよかったけど。この行動について作中のこの子のファンはどう思ったんだろう。事務所的にも心配。
・ 麻奈美…小さい頃から京介を自分好みに仕立てていた黒幕。でも、京介は手に負える相手じゃなかった。ある意味加害者で、ある意味被害者。大学行ったら吹っ切れるんだろうな。


この「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は、作品としての面白さはもちろん、友人たちと「どのキャラが好き」とか「京介は誰と付き合うか」とか話すのが非常に楽しかった。
素敵な作品をありがとうございました!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 電撃文庫
感想投稿日 : 2013年6月14日
読了日 : 2013年6月14日
本棚登録日 : 2013年6月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする