チェルノブイリ原発近くプリピャチの町に放置された観覧車についての記述があった。
「観覧車」…それは、均質的都市空間の中にあって場違いな姿を見せる。「あれあれ、ひとつだけこんなにもまるくていいのだろうか、怒られやしないのかと案じられるほどまるいのである」
…プリピャチの曇天に「凍てつき浮かぶ黄色の何でもない円」が浮かんでいる。観覧車はゆったりくるくる回る古来の時の象徴。直線的に文明が進歩し続ける時間とはまるで違う。そんな観覧車が造られたものの、原発事故があって、いまも時を回すことの出来ぬまま止まっているのだ。この現状をどう言葉で表わそう。悲しくて言葉にならない。「小さな世界」がとてつもなく巨大な怪物に殺されてしまった。ゆるゆる回る小さな時の流れを、瞬時に消し去ったチェルノブイリ原発事故だった。3.11の原発事故があったことを機にこれを読んだ。
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- 感想投稿日 : 2017年12月22日
- 読了日 : 2017年12月22日
- 本棚登録日 : 2017年12月22日
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