1899年、新渡戸稲造が日本人の道徳感を形成する根幹にあるものとして、海外に英語で提示した書。
文明開化からまだそう経たない時期であるが、すでに義理という言葉は本来の道義の理屈という意味から放れて使われていたというような逸話がある。著者は、明治となり西洋化する日本社会において過去の日本人が持っていた良いものが徐々に失われていくことを嘆いている。現代においても同様な事例は事を欠かないことを考えれば、こうした変化はまた歴史において必然ということなのかもしれない。
また、切腹についての章は現代に生きる我々にはかなり衝撃的である。「名誉の失われし時は死こそ救いなれ、死は恥辱よりの確実な避け所」というガースの詩を引用している。この西洋の詩人の言葉は期せずして、それが切腹の本質的な意味を現している。本章では2件の切腹の様が生々しく描写されているが共に壮絶である。その内の一件は、父の仇を討つために、徳川家康の命を狙い捕らえられた兄弟であり、その煽りを受けて一族の男子皆が刑に処される定めを受け、若干8歳の末弟も連坐の上で腹を切るのである。衝撃のあまり、読んだ当日よく眠れなかった。
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- 感想投稿日 : 2018年10月8日
- 読了日 : 2010年2月19日
- 本棚登録日 : 2018年10月8日
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